「田原×古市~2013夏のダイアローグ~」番組収録後インタビュー:古市憲寿
2013年9月1日(日)0:00~1:00〔土曜深夜〕放送予定のニッポンのジレンマ「田原×古市~2013夏のダイアローグ~」収録後、田原総一朗さんにインタビューを行いました。
古市 憲寿 (フルイチ・ノリトシ)
1985年生まれ。社会学者。著書に『希望難民ご一行様』(光文社新書)、『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)、『誰も戦争を教えてくれなかった』(講談社)などがある。
――今回の番組で印象に残った田原総一朗さんの発言などはありましたか?
古市 田原さんが「今の彼女とうまくやっている」とおっしゃっていた点が印象的でしたね。普段の田原さんは、あまり女性観や家族観を語ることがありませんので。その話はとてもおもしろかったです。
――テレビでの田原総一朗さんと対談は初の試みだったと思います。いかがでしたか?
古市 雑誌などで対談したことがありますので、田原さんとの対談自体が初めてというわけではないのですが、テレビというメディアでの田原さんは今までとまったく表情が違いましたね。オーディエンス(視聴者)を意識していらっしゃる結果だと思います。印象的な発言を引き出す、言葉を長くし過ぎないなど、テレビをきちんと考えていらっしゃるように見えました。田原さんはテレビを熟知されていらっしゃるのだと思います。
――田原さんから厳しいツッコミを受けていたように見えましたが。
古市 そうですか? 実は、いつもよりテレビ収録をラクに感じていました。いつもの「NHKニッポンのジレンマ」だとMCという立場なので、番組をちゃんとまわさないといけないなと、けっこう考えながら発言しています。でも、きょうは流れにまかせて会話していけばよく、その場で疑問に思ったことを聞いていけばいい、という感じでした。田原さんが番組を仕切ってくれていると“絶対に何とかなる”という安心感がありますよね。すごく楽しかったです。
――討論番組を仕切るという点で、先輩である田原さんから学ぶことなどはありましたか?
古市 前提として、僕は「NHKニッポンのジレンマ」では司会者という意識はまったくないです。できるとも思ってないんです。その点、田原さんも何十年も「朝まで生テレビ」をやられていながら、実は司会者じゃないというのはおもしろいですよね。たまたま表に出ているだけだというスタンスで。
きょう、田原さんのお話を聞いていて思ったのは、もう少しオーディエンスのことを意識しなきゃいけないんだなということです。僕はどうしても目の前にいる人のことを大事にしてしまいます。たとえば、討論に参加している人や、番組をつくっているスタッフの人たちのことです。僕の場合、テレビもネットも雑誌も、普段友だちと話すのも、基本的にメディアによって話し方を使い分けていないので大差ありません。たとえば本だとせいぜい十万くらいの単位なので、なんとなく読んでくれる人を想像することができる。顔が見えるんです。でも、テレビは桁が一つも二つも増えてしまうので、具体的にはほとんど想像ができません。でも、田原さんの話を聞いて、顔が見えない人たちであってもアタマに思い描きながら話してもいいんだと思いました。
逆に、田原さんの場合はずっとテレビに出ている感覚があるのか、身体化されているというか、プライベートで会った時でも「この人は今、オーディエンスを意識しているんじゃないか」と思う時があります。さすがに今はテレビだけじゃなくネットもありますので、じゃあ今のテレビのあり方はどうなのだろうと考えさせられました。