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2015.04.24
2014.06.18

「僕らのキャリアデザイン論」番組収録後インタビュー:服部泰宏

2014年6月29日(日)0:00~01:00[6月28日(土)深夜]放送予定のニッポンのジレンマ「僕らのキャリアデザイン論」収録後、服部泰宏さんにインタビューを行いました。

服部 泰宏 (ハットリ・ヤスヒロ)

1980年生まれ。経営学者。横浜国立大学大学院国際社会科学研究院准教授。神戸大学大学院経営学研究科マネジメント・システム専攻博士課程を修了し、博士号(経営学)取得。行動科学、キャリアデザイン論などを背景に、経営学の観点から採用基準のルールや需給のミスマッチを分析し、採用を科学的に検討する「採用学(https://www.facebook.com/saiyougaku)」を提唱し注目を集めている。2010年、第26回組織学会高宮賞受賞。著書に『日本企業の心理的契約 増補改訂版: 組織と従業員の見えざる契約』(白桃書房)などがある

――今回の番組で“最も伝えたかったこと”は何でしょうか。

服部  誰にとっても「キャリアの節目」というものは、なかなか分かりにくいものだと思います。ですから、まずは「これならやれるかも」と思えた目の前のことをしっかりやることが重要だと思います。だまされたと思って。やりたいこと、やりがいというのは、そうやってとことんやってみた結果として、後からついてくるものだと思いますし、そういう意味ではすべての瞬間が「節目」だとも言えると思います。
 キャリアデザインと言うと、外に出て行く、つまり転職することばかりが頭に浮かんでしまうという現状もある。これは組織の中でキャリアをデザインすることが難しくなっている証拠でもあると思います。実際に現代の日本企業は組織がフラットになり、成果主義が浸透してきているので昇進の機会も限定されてしまっている。つまり、一度組織に入ると、外に出て行くことでしかキャリアデザインがしにくくなっていることが、現在の閉塞感につながっているのです。
 ですから入社後にどのようなキャリアを歩めるのかについて、採用の段階で企業と労働者側がコンセンサスを取っておく必要があると思います。それが、働く側のモチベーションを上げることになるという研究結果もあるんです。

――今回の番組で“興味を持った、あるいは、印象に残った発言や話題”はありましたか。

服部  キャリアデザインというと限りない選択肢のなかから自由に選び取るというイメージがありますが、だからこそ迷ってしまうという側面があると思うんです。でも、僧侶の松本紹圭さんがおっしゃるとおり、僕らは人生を歩んできた過程で、たくさんのものを背負ってきているんですよね。学歴だったり、生まれた家庭だったり、人間関係だったり。その背負ってきたものにフォーカスを当てて考えてみると、キャリアというものも違った見え方がしてくる。自分が背負っているものがなにかということをしっかり考えれば、自ずと自分自身のアイデンティティや進むべきキャリアが見えてくるのだと思いました。

――服部さんが提唱されている「採用学」とはどのようなものなのでしょうか。

服部  採用や就職という現象を科学的に分析する研究です。今日の収録では企業の採用基準が曖昧であることや、自己分析を強いている就活システムなどに対して批判がでていましたが、企業としてもやむにやまれぬ事情があるんですね。非常に短い期間でたくさんの学生と接しなくてはいけないという実情があるので、企業側ばかり批判すればすべてが解決するというわけではありません。
 たとえば「コミュニケーション能力」という曖昧な採用基準があったとして、それをただ単に批判するのではなく、具体的にどのような部分を見ればいいのか、データやエビデンスを伴った形で明らかにすることが必要だと考えています。実際の採用の現場では、最終的に面接官の好みが優先されてしまいます。そうすると同質性の高い人材ばかりになってしまい、ダイバーシティを実現できない。しっかりした客観的な採用基準を設けることで、多様な人材を確保することにつながると思っています。

――キャリアに迷っている視聴者へのアドバイスをお願いします。

服部  なにごとも、とにかくまずはやってみるしかないということです。やる前から想像してキャリアを考えられる人もいると思いますが、そういう人はごく一部。繰り返しになりますが、ほとんどの場合、やりたい仕事はやってみてから見つかるものだと思っています。とりあえずやりたことを見つけて、とりあえずとことんやってみる。ぎちぎちにキャリアを決めてしまうのではなく、「とりあえず」という発想を許容することも大切だと思います。