「数理のチカラ、僕らの未来」番組収録後インタビュー:岩瀬大輔
2013年6月30日(日)0:00~1:30〔土曜深夜〕放送予定のニッポンのジレンマ「数理のチカラ、僕らの未来」収録後、出演者のみなさんにインタビューを行いました。
岩瀬 大輔 (イワセ・ダイスケ)
1976年生まれ。ライフネット生命保険株式会社代表取締役社長。東京大学法学部を卒業後、ボストン・コンサルティング・グループなどを経て、ハーバード経営大学院に留学。同校を日本人では4人目となる上位5%の成績で卒業(ベイカー・スカラー)。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2010」。著書に『生命保険のカラクリ』(文春新書)、『入社1年目の教科書』(ダイヤモンド社)など。
――今回の番組「数理のチカラ、僕らの未来」に参加して、最も伝えたかったことは何でしょうか。
岩瀬 伝えたかったことというのは、特にないのですが……。
まぁ、「数理」というのが、ちょっとよくわからないんですよね。自分にとって「数理」とは「生命保険数学」や「統計」を意味するわけですが、その認識が共有されているわけではない。「科学」の話であればいいのですが、「数理」と言ったときに、結局みんな何の話をしているのか、共通の定義がなかったので、難しいなと思ったんです。
出演者のお一人が、「数理的なセンス」とは数字に基づいてロジカルに物事を考えていくことだ、というようなことをおっしゃっていました。私は法律の勉強をしていましたが、それって法律も一緒なんですよね。論理的な思考というのは、別に数理的なセンスに限られることではないので、本当の「数理的なセンス」とは何なのかということが自分の中でもよくわからなくなりましたね。
ただ、きちんと数字を見ることや、事実とデータに基づいて意思決定をしようということは、日ごろから私も言っていることで……感情とかだけで議論するのではなくて、きちんと数字やファクトに基づいて議論して意思決定をするということはとても大切なんですね。
一方で、数理的なものが答えを導いてくれるわけではなくて、最後は好みで決めればいいんですよという発言もあって、まったくそのとおりだなと思うんです。選択肢を洗い出すための有用なツールにはなるんですが、最終的には答えは自分で導かなくてはならない。当たり前のことではあるのですが、そのとおりだなと思いましたね。
――数理(あるいは科学)と“社会”とのかかわりについても議論が交わされました。数理と社会がうまく連動するためには、どうしたよいとお考えですか。
岩瀬 一般的な話ですけれども、日本で科学者と呼ばれるような人たちは、社会とのかかわり方というか、コミュニケーション能力にあまり長けていないという印象があります。
私はアメリカに留学していたのですが、そのときに知り合った科学者たちのなかには、プレゼンの上手な人も多かったんですね。比べて、日本の人たちはあまり上手ではないように思います。
ですから、もっと社会に受け入れられるためには、科学の側が、そうではない人々に対して“伝える力”というものを、もっと高めていかなくてはならないのではないかと思います。