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2015.04.24
2012.12.26

「格差を超えて 僕らの新たな働き方」番組収録後インタビュー:安藤美冬

2013年1月1日(火)23:00~25:30放送のニッポンのジレンマ「格差を越えて 僕らの新たな働き方」収録後、出演者のみなさんにインタビューを行いました。

安藤 美冬 (アンドウ・ミフユ)

1980年生まれ。㈱スプリー代表。多種多様な仕事を手がける独自のノマドワーク&ライフスタイル実践者。『自分をつくる学校』学長、NOTTVの『テレビをほめるYESTV』レギュラーMC、『DRESS』の女の内閣 働き方担当相を務め、商品企画、講演など幅広く活動中。TBS系列『情熱大陸』、NHK Eテレ『ニッポンのジレンマ』などメディア出演多数。著書に『冒険に出よう』がある。

――「ニッポンのジレンマ」に二度目のご出演となりましたが、印象に残ったことはありましたか?

安藤 2012年3月放送回に続いて、今回は「格差と新たな働き方」というテーマで呼んでいただいて率直に感じたのは、「経済格差が拡大するにつれて、精神格差も広がっている」ということ。イベントもご一緒させていただいた人事コンサルタントの城繁幸さんの言葉を借りれば、まず「シャレにならないほどの格差が広がっている」。そしてその結果、「この世に絶望を感じる人と、同じ状況にあっても新しい何かをはじめるチャンスと捉えて希望を見いだす人に分かれてきている」ということです。

討論の冒頭から宇野常寛さんが今回のテーマである「格差」と「働き方」の二つをどうリンクさせるのかを繰り返しおっしゃっていましたが、私自身は、これからの日本を取り巻く世界情勢を眺めてみても、経済格差は是正されるどころか、ますます広がる一方だと考えています。だからこそ、格差が拡大する現代日本でサバイバルしていくために「今、どんな働き方をしていくべきなのか」に焦点を当てたい。例えば、「ポートフォリオワーキング」。これは言い換えれば「複数の業を行う=複業」であり、ひとりひとりが複数の収入源(マルチインカム)を見つけていくということです。今年話題になった本に『ワーク•シフト』というビジネス書があります。これは、2025年における未来の働き方を論じた一冊なのですが、ここで非常に面白い言及がある。それは、「オークションサイトなどを使って、自分の店を持ったりスキルを売ったりすることで、会社に属さないミニ起業家たちが多く登場する」という言及です。例えば、「Yahoo!オークション」サイトには最近、「スキルを売る」項目が登場しました。結婚式のビデオ制作を5,000円で、あるいは写真の修正を一枚2,000円で販売し、落札されている状況が生まれてきている。あるいは、「ココナラ」という個人間スキル取引のサイトでは、離婚を経験した女性が離婚相談にのるといったように、スキルだけでなく「経験」が、一律500円で売り買いされているのです。こうした新しいサービスの登場によって、会社員の人でも、メインの仕事をしながらもう一つのジョブを実践する「パラレルキャリア」が可能となり、今いる場所で自分を最大化する、つまり現代に自分を最適化した働き方を見つけていくことが今後拡大していくと思っています。

――なるほど、経済格差が簡単には是正されないいう前提で、個人個人が「今、できること」を考え、実践していくことが大事なのですね。

安藤 世の中に対して不平不満をこぼしたり、国や会社や社会の環境に対して何もやってくれないと絶望に嘆き沈むのは、すごくもったいないことです。そもそも、雇用の規制緩和も年金問題も女性の社会進出も、一体何年、この国では議論され続けているのでしょうか。そしてその間に一体何が目に見えるかたちで解決されてきたのか。もちろん、できる限り国や社会にコミットしながら制度を変えることに対して尽力することは大事です。一方で、制度が変わるのをただ待つのではなく、私たちが勇気を持って「個人の突破力」を発揮していくことをやっていかなければならない。ルールを破ることを怖れ、批判を怖れ、失敗を怖れていては何もはじまらない。そうしていつか、突破する個人が増えていった未来、つまり雇用が流動化して社会に多様な働き方が増えてきた時、むしろ制度が個人に合わせて変わっていくのではないでしょうか。個人が制度に合わせるのではなく。だからこそ、私はあくまで自分のやるべきことに集中したいと思っています。まぁ、といっても、これしか私にはできないんですけど(笑)。

――番組は2013年元日の放送です。2013年のご自身の抱負を教えてください。

安藤 目の前のことを淡々とやる。それだけです。こんなキャリア論があります。クルンボルツ博士が提唱する「プランドハプンスタンス(計画された偶然性)理論」というものです。これは、変化の早い現代においては、5年後、10年後のキャリアを詳細に計画してもあまり意味がなく、むしろ知的好奇心や行動力、そして冒険心を持って、目の前のことを情熱的に取り組む重要性を示唆しています。「たまたま」出会った人、「たまたま」読んだ言葉、「たまたま」出かけた場所、そうした「たまたま=偶然性」が思いがけないかたちで私たちの未来を拓き、人生に転機をもたらしてくれるのです。そうして私は、2013年も日々を生きていくだけ(笑)。それだったら、誰であってもこの瞬間から実践できるでしょう。正解なんて分からないし、未来は不確定、だからこそ面白い。経済格差を簡単に是正できないなら、徹底的に「精神格差」を埋めていきたい。こう思える仲間がひとりでも増えたらいいですね。



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