「僕らの国際関係論」番組収録後インタビュー:吉田徹
9月29日 0:00~放送予定のニッポンのジレンマ「僕らの国際関係論」収録後、出演者のみなさんにインタビューを行いました。
吉田 徹 (ヨシダ・トオル)
1975年生まれ。政治学者、北海道大学公共政策大学院准教授。著書に『ポピュリズムを考える』(NHK出版)、『二大政党制批判論』(光文社新書)など。
―今回、他の出演者のコメントで印象的だったもの、また、持ち帰って考えてみたいと感じた論点はありましたか?
吉田
宇野常寛さんのことは以前から尊敬申し上げているのですが、一方でスタンスに違和感を覚えることもあります。僕らの専門用語でいえば「ピースミール社会工学」的な考え、つまり「社会に何か問題がある→部分的に手当てしていけばいい→そのためには使えるものは何でも使うべきだ」という基本的なスタンスだと思うのですが、それはとてもスマートですし、分かるところもあるのですが、僕は彼と違って基本的にはモダニストなので(笑)。その前に「主体」や「意識」というものが大事なのではないかと思うところがあるので、上手く議論に接続できるところはないのかな、と常に考えています。
また、自分から振った「日本で政治家に対する不信の度合いはなぜ高いのか」という論点は、さらに深く考えてみたいと思いました。政治不信は、消費税にしても何にしても、いろいろな政策を打つにあたって有効に働かない大きな源泉ですよね。與那覇さんがおっしゃった「自分が損すると、他人が得するのではないかと」という疑心暗鬼がなぜ払拭されないのか、社会に対する「信頼」をどう高めていけるのか、についてこれからは考えていく必要があるのではないでしょうか。
―今、行きたい国はどこですか。
吉田
僕は基本的には「住めば都」なので、どこでもいいのですが、あえて言えば、地中海から中東にかけての地域に惹かれるものがあります。レバノン、イラン、トルコ、シチリア・・・・・・日本と何が大きく違うかと言えば、例えば、日本では物を買うとき、固有名詞を発音するだけで物が買えてしまう。商品名を言ってお金を払えば、物が買えてそれで人と人との関係が終ってしまう「沈黙の経済」です。
一方ただ、人間関係が先立つ国々では、消費するのに、人間同士の信頼関係が必要になってコミュニケイティブたらざるを得ないような「饒舌の経済」です。そうした「交換=交感」には、口べたな日本人には時に面倒くさく感じることもありますが、非常に楽しい。それって、社会の中で暮らしていて不安感を覚える国とそうでない国との大きな違いなんだろうと思うんですよね。