「資本主義のジレンマ大研究」番組収録後インタビュー:崔 真淑
2015年2月28日(土)00:00~01:00[3月1日(日)深夜]放送予定のニッポンのジレンマ「資本主義のジレンマ大研究」収録後、崔 真淑さんにインタビューを行いました。
崔 真淑 (サイ・マスミ)
マクロエコノミスト。2008年、大和証券SMBC金融証券研究所(現:大和証券)に入社。当時最年少の女性アナリストとして活躍。2012年に独立し、資本市場の社会的意義を伝える組織Good News and Companiesを設立。経済学を軸に、経済ニュース解説、マクロ経済・資本市場分析を得意とするマクロエコノミスト・コンサルタントとして活動。昭和女子大学現代ビジネス研究所 研究員なども務める。2014年より一橋大学大学院 国際企業戦略研究科に在学中。
――今回の番組で“最も伝えたかったこと”は何でしょうか。
崔 「ソーシャル・インパクト・ボンド」の存在を知ってもらいたいと思っていました。今回のテーマは資本主義です。一般的には資本市場における投資の仕組みをダーティーなものとして捉えている人が多いと思います。資本家が投資をして、お金を膨れ上がらせるといったような。しかし、それだけが投資の仕組みだけではありません。ソーシャル・インパクト・ボンドは、社会的問題の解決に対して投資していく仕組みです。たとえばニューヨーク市では、再犯率の低下に投資し、リターンを得るという取り組みが実施されました。再犯率が下がれば刑務所の維持費などが低下するため、そのぶんを出資してくれた人にリターンするのです。社会的に良いことをして問題解決をすると、行政の財政出動が減ってお金が儲かるというわけですね。日本は少子・高齢化などが進む課題先進国です。そういった課題に対して投資する金融商品が、もっと浸透すればいいと思っています。資本主義にもそういう仕組みがあるということを伝えたいと思っていました。
――今回の番組で“興味を持った、あるいは、印象に残った発言や話題”はありましたか。
崔 人口が減っていくなかの資本主義、民主主義の形がどうかわっていくのかについての話題が興味深く思いました。人口が減ると、競争原理が働かなくなり、イノベーションが起こりにくくなる可能性があります。そうなると、資本主義や民主主義の停滞につながることも考えられる。ピケティは、低成長が続くと、格差がさらに広がるということを示唆しています。一方で、格差を是正したからと言って、低成長が是正されるとも限りません。ですから、私は経済成長を目指し、全体のボトムアップを目指すべきだと思います。そのためには、すべてのパイを増やすようなイノベーションが必要になるでしょう。
——日本における資本主義は、今度どうなるべきだと思いますか。
崔 先程、説明したソーシャル・インパクト・ボンドのような「課題解決型資本主義」が根付くことが必要です。その際は国家だけではなく、民間が主体となって動けるような分配の仕組みを作るべきなのではないかと思っています。民間の企業や団体が課題解決に貢献したら法人税などが下がるといったような。あとは、日本は先進国の中でも寄付指数が低い国だと言われています。なぜ貧困者や貧困国を助けることが必要なのかというと、もちろん人道支援という側面はありますが、将来のお客さんを開拓するという意味もあるのです。そうした集団主義的な視点が日本の資本主義には必要になるということと、先程から言っているようにリターンの仕組みを工夫したり、イノベーションを促したりすることで経済成長していくような流れを加速させるべきだと、私は考えています。
——最後に視聴者へのメッセージをお願いします。
崔 アベノミクスにすべて賛同しているわけではないのですが、今、日本は変革の時期に差し掛かっていると思います。生活に苦しみ、不安を抱えている人も多いと思いますが、明るい兆しが出てきていることにも目を向けてほしい。国だけではなく、民間が主体になって問題解決しようという動きも出てきています。まだまだ日本は世界から見れば、高い評価を得ているブランド国です。日本に生まれてきたことに対して誇りを持って、みんなで創意工夫しながら明るく、豊かな社会を作っていければいいなと思っています。