「僕らのアグリビジネス論」番組収録後インタビュー:伏見友季
2014年7月27日(日)0:30~01:30[7月26日(土)深夜]放送予定のニッポンのジレンマ「僕らのアグリビジネス論」収録後、伏見友季さんにインタビューを行いました。
伏見 友季 (フシミ・ユキ)
1979年生まれ。久松農園農場長。清泉女子大学スペイン語スペイン文学科卒業後、(株)日比谷花壇、(株)ABC Cooking Studioなどの勤務を経て、2012年久松農園入社。農場長として生産から販売全般を統括すると共に、加工品や農場全体のデザインをも手がけるスーパー農業サラリーウーマン。〝女性の職業としての農業"の伝道師として講話したり、農林水産省がたちあげた「農業女子プロジェクト」の第1回推進会議メンバーに選ばれるなど多方面で活躍中。
――今回の番組で“最も伝えたかったこと”は何でしょうか。
伏見 私は転職して農業の世界に入り、実家も農家ではありません。そうした農業経験のない私でも農業を仕事にできて、入社2年目には農場長になることができる。一般的には農業は敷居が高いイメージがありますが、普通の人もやっていけるということを伝えたいと思っていました。普通に就職して、仕事内容がたまたま農業だったくらいの感覚でしょうか。普通の会社員と変わらないスタンスで農業を仕事にすることもできるんです。
――今回の番組で“興味を持った、あるいは、印象に残った発言や話題”はありましたか。
伏見 作っている作物によってだいぶ立場が違うなと思いました。米、野菜、養豚では制度上の違いもありますし、大規模に経営しているのか、私たちのように小規模で顔の見える相手に売るのかで大きく考えが違います。一口で農業と言っても、いろいろあるんだなということを出演者と話していて感じました。
さらに、経営者なのか、もしくは私のように従業員なのかでも考え方はまったく違います。代々の農地を継いでいる経営者はその分思いが強いですし地域に対する役割も大きいですよね。とても素晴らしいことだと思います。ただ、それを押し付けがましく主張してしまうと新しい人が入ってきにくくなることもあると思います。すべての人に「日本の農業を背負っている」という意識が常にないといけないとは全く思いません。純粋に「農作業が好き」でもいいじゃないんでしょうか。
――農業の魅力を教えてください。
伏見 農業は以前からの考えや制度が残っていてまだまだ閉鎖的な世界と感じることもあります。でも、逆に言えばこれからどんどん変えようがあるし、そのチャンスがあります。ですから、若くて革新的なことをやりたい方には向いていると思います。
今の仕事をしていてやりがいを感じる部分は、自分の作ったものがお客様に届いて反応があるということです。美味しいと言われたらうれしいですし、そうでないならどう改善していくべきか考えることができます。一方通行で作った作物を出荷するだけでは、そうした反応をいただくことができません。そうした売り方は私にとって楽しくない。お客様と対話しながら、農作物と向き合えることが魅力ですね。
――日本の農業が抱える課題は何ですか。
伏見 大きいスケールで農業をまだ捉えていませんので今のところあまり考えたことがないです。農業ではない他の業界に勤めている人だって、全員がその業界の未来を背負うとか、その業界に大改革を!という思いで働いているわけではありませんよね。でも何故か農業には、そういったものをみんなが考えていかなければいけない雰囲気もある。私は野菜を作るのが楽しいし、現場をより効率よく、最適化すべく改善を重ねていくのにもやりがいを感じます。大それたことを考えなくても、それでいいのではないでしょうか? 小さくても強い農家が増えていけば、日本全体を変えようとしなくたって、きっとよい方向にいけるはずです。そのためには、私はおいしい野菜を育てて、お客様に届け喜んでもらうというごくごく単純な思いを大切にしていきたいと思います。