「新世代の会社活用作戦」番組収録後インタビュー:刈内一博
2014年6月01日(日)0:00~01:00[5月31日(土)深夜]放送予定のニッポンのジレンマ「新世代の会社活用作戦」収録後、刈内一博さんにインタビューを行いました。
刈内 一博 (カリウチ・カズヒロ)
1978年生まれ。筑波大学大学院修了、野村不動産株式会社入社。分譲マンション「PROUD」の事業推進・建築部門を経て、商品開発部では「かやぶきの里プロジェクト」を起案、グッドデザイン賞3部門受賞。2014年4月より海外事業部に配属、海外市場の開拓に従事。業務外活動として「新宿360°大学」を立ち上げ、独立企業でも社畜でもないサラリーマンの働き方として、イントレプレナーシップの可能性を探る。共著に、『新世代トップランナーの戦いかた 僕たちはこうして仕事を面白くする』(NHK出版)。
――今回の番組で“最も伝えたかったこと”は何でしょうか。
刈内 やはり一番伝えたかったことは、「サラリーマンも面白いよ」ということですね。サラリーマンを「社畜」とし、そこから解放された「独立企業」や「ノマドワーカー」が注目を集めるなど、会社勤めに対するネガティブな論調が流行っていたので、その流れを変えたいと思っていました。
というのも、サラリーマンは、お金、人、ノウハウ、信頼など会社のリソースを上手く使えば、レバレッジ(てこ)の効いた仕事ができるというメリットがある。つまり、やりたいことが、社会によりインパクトをもって実現できる可能性があるんです。
ただし、僕は「会社を利用してやる」という発想があまり好きではありません。会社に敬意を持って「共存する」というか、自分と会社双方にとってメリットがあるような仕事をしなければいけないと思っています。
――今回の番組で“興味を持った、あるいは、印象に残った発言や話題”はありましたか。
刈内 収録に臨む前には、岩佐さんと仲さんは会社を辞めている立場の方なので、意見をすりあわせるのが難しいかもしれないと思っていました。でも、お二人とも会社の良さも認識して話されていたので、そこは印象的だったし共感ができました。
日本にはサラリーマンが圧倒的に多く、欧米と比べても大企業に資本が集中しています。ですから、日本は大きな組織が変わらないと社会が変わらない国だと思う。となれば、独立して頑張っている人ももちろん大事なんだけど、会社から社会を変えていくという仕事にサラリーマンがちゃんと取り組むことが必要だと思うわけです。
番組では「イントラプレナー」という言葉を使って説明しました。この言葉の定義は、「社内起業家」ではなく、「資本とアイディアを結びつけて社会に価値を生み出す人」だと考えています。大企業に集中している資本を扱える立場でありながら、アントレプレナー(起業家)たちのアイディアや彼ら自身を活かしながら、社会に新しい価値を生み出すことができる。
だから、「サラリーマンvs.起業家」という二元論で語ることは、そもそもナンセンスなんですよ。イントラプレナーとアントレプレナーは、良きパートナーであるべきだと思います。
――これからどういう仕事、どういう働き方をしていきたいと考えていますか。
刈内 2011年にニューヨークタイムズに掲載されたデューク大学の研究によると、その年に小学校に入学した児童の65%が、将来、今は存在しない仕事に就いているそうです。僕自身も、これからどんどん新しい仕事が生まれ、今ある仕事が淘汰されていくと思っています。僕はすでにある仕事に就くのではなく、自分自身で新しい仕事を生み出す側にいたい。とはいえ、まずは目の前のことに精一杯力を注いでいきたいと思っていますが。
また、入社して10年間は国内市場を担当したので、これからは海外ビジネスに関心があります。おそらくこれから先は国内、海外という区別はなくなり、すべてがボーダレスになってくると思います。国内と海外をフラットに考えられるようになるためにも、海外ビジネスのことをもっと知らなくてはいけないと思って頑張っています。
――20代、30代の悩める視聴者にむけてアドバイスをお願いします。
刈内 サラリーマンであれば、会社を楽しくするかどうかは本人次第。上司の理解がないとか、会社の文化が合わないとか、言い訳をしたらきりがないので、まずは仕事を楽しくすることにチャレンジしていけばいいと思います。
ただ、実際にはチャレンジする気にもなれない人も多いと思うんですよ。そういう人はチャレンジしたくなるような環境づくりが大切だと思います。会社のネガティブな人たちに囲まれて、上司の悪口を言いながら飲んでいるなんて環境はよくない。積極的に社外に人脈を広げて、会社にいるだけでは知ることができない情報を獲得する。ポジティブに将来を語れるような環境を、周囲に作っていくことから始めてみてはいかがでしょうか。