「僕らが描く この国のカタチ2014」番組収録後インタビュー:江口晋太朗
2014年1月1日(水)23:00~25:30放送予定のニッポンのジレンマ「僕らが描く この国のカタチ2014」収録後、江口晋太朗さんにインタビューを行いました。
江口 晋太朗 (エグチ・シンタロウ)
1984年生まれ。編集者、ジャーナリスト、コンテンツディレクター。高校卒業後、2003年に陸上自衛隊西部方面普通科連隊に入隊。06年に除隊し、07年に大学に進学。情報設計や情報環境デザインをもとにしたコンテンツ企画制作等を手がける。2012年、ネット選挙解禁に向けて活動したOne Voice Campaignを立ち上げ大きなムーブメントを作った。著書に『パブリックシフト ネット選挙から始まる「私たち」の政治』(ミニッツブック)など。
――初めての「ニッポンのジレンマ」参加となりました。感想などあれば。
江口
「僕らが描く この国のカタチ2014」というテーマからそれぞれイメージするものが、ここまで違うのかということを、まざまざと感じた議論でした。
大きく分けて学者の方々と実業家の方々が今回の参加者だったと思います。学者の方々は国の歴史や過去の経緯などの視点から、国がどうあるべきかという視点でした。一方、ビジネスをしている方々は、仲さんやはあちゅうさんなど20代が中心でした。若いせいか、ビジネス側の人たちは国や社会よりも自分の生き方を大事にしよう、国や社会との関係よりも自分がどう生きたいかを考える、という意識が強かったように思います。
裏を返せば、今の若い世代は国や社会の変化をそれほど気にせずに生きてこられたということかもしれません。自分はどうかといえば、中長期的に見たときに「これでいいのかな」という問題意識があります。ですので、普段はビジネス側の方たちと一緒に仕事などをしながらも、「もう少し政治や行政に目を向けた方がいい」という立場でした。
たしかに現状は幸せだと思う人たちが多いかもしれません。でも、東京オリンピックが開催される2020年、もっといえば2030年、2050年と将来を見据えたときに、今の幸せが続く保証などどこにもない中で、若い人たちが個人のことだけを考え、国や社会のことを考えないでいいのかと危機意識を私自身は持っています。今回の議論では、学者の方々の話と実業家の方々との、そうした溝を感じずにはいらなかったと同時に、議論において私の立ち位置や考えをもう少し話せたら良かったのかなと感じました。
――今回の番組で“もっとも伝えたかったこと”は何でしょうか。
江口 「もっと政治が日常化すればいいよね」ということだと思います。
政治や行政と聞くと、多くの人は何か小難しいイメージがあるかもしれません。でも、街を良くしよう、地域を良くしようというときに、政治や行政を無視し、民間の人たちだけで何かアクションをしようと考え、同じ話し合いのテーブルに政治や行政の人がいないという状況は、短期的には居心地の良いことですが、中長期では断絶が起きてしまい、よくありません。
政治だから行政だからと固定的な役割に縛られるのではなく、同じ日本で暮らしている一人の人間として話し合いができるようになればいいなと常々考えています。要するにそれぞれにおける役割の違いでしかなく、社会の仕組みを構築するハード側なのか、その仕組みの上でビジネスなどを行うソフト側なのかの違いでしかありません。番組の中でも「もっと政治が日常化すればいいよね」という話をしたのは、ハードもソフトも両方が合ってこそ社会は良くなると考えており、そのためにも政治が日常化することの意味があるのです。
おそらく、政治家や町役場の人たちと会ったことって意外とないものですよね。だから無機質に感じている人も多いのかもしれません。でも、ちゃんと一人の人間として向き合ったら魅力的で面白い人も多いですし、地域に貢献したいと情熱を傾ける人たちもたくさんいます。私自身、現在オープンデータの推進やオープンガバメントといった国や自治体の仕組みづくりに取り組んでいるのですが、それもすべて未来を考えた時に多様な人たちで社会を作り上げるための方法として模索しているからなのです。そのためにも、まずは対話をすること。もちろんその対話をする場をどうつくるかは課題ですが、対話をすることがアクションのための第一歩です。そのためにも、互いに一人の人間としてきちんと向き合い、付き合っていく環境になればと思います。
――この番組放送は元旦の予定です。2014年の抱負などあればぜひ。
江口 あらためて自分たちの足元の暮らしから見つめなおそうと考えています。たとえば東日本大震災からもうすぐ3年が経ちますが、震災からの復興も実務ベースになっていく時期だと思います。同じように、あらためて自分たちの住む地域をどうしていけばいいのか、中長期的な視点で見ていくのが大切になるタイミングだと思うんですよね。2020年の東京オリンピックもいいですが、10年後、20年後の東京はどうあるべきかといった都市計画、そしてその先にある日本はどうあるべきかという議論を、多くの人たちとしていくことが大切です。テクノロジーからデザイン、メディア論までいろいろ多岐に渡りながら私は活動していますが、きちんと研究や分析をし、いろんな人に考えをシェアし、そして一緒に行動していければと思います。