「僕らの新グローカル宣言」番組収録後インタビュー:伊藤直樹
2013年12月22日(日)0:00~1:15〔土曜深夜〕放送予定のニッポンのジレンマ「僕らの新グローカル宣言」収録後、伊藤直樹さんにインタビューを行いました。
伊藤 直樹 (イトウ・ナオキ)
1971年静岡県生まれ。クリエイティブディレクター。クリエイティブラボ「PARTY」の代表取締役(CEO)。これまでにナイキ、 グーグル、SONY、無印良品など企業のクリエイティブディレクションを手がけ、文化メディア芸術祭優秀賞、グッドデザイン賞など、国内外の200以上に及ぶデ ザイン賞・広告賞を受賞。著書に「伝わるのルール」(インプレス)、作品集に「PARTY」(ggg books)などがある。京都造形芸術大学情報デザイン学科教授。
――今回の番組で“もっとも伝えたかったこと”は何でしょうか。
伊藤 東京に20年以上暮らしながら、いまでは毎週末を京都で過ごしています。そして、つい先日もアメリカの西海岸と台湾に行ってきました。 個人的には国内外の様々な場所を頻繁に行き来することが多く、グローバルとローカルが対立概念として存在するような感覚はもはやありません。むしろ、それらが非常にシームレスに溶け合ったまさに「グローカル」感覚がいま大切なのではないかと痛感しています。 その感覚は、移動し、動き続けるなかで自然と得られるものだと思います。だからこそ、世界中のウェブサイトのなかを動き続けること、あるいは飛行機や電車や自転車や徒歩で移動し続けることが大切だと、私は考えています。 そのなかで、それぞれの場所の風土にインスピレーションを受け、大きなエネルギーをもらいながら生活している自分のナマの感覚をなんとかお伝えしたかったのです。
――番組内で“興味を持った発言”や“印象に残った発言や話題”はありましたか。
伊藤 立命館アジア太平洋大学(APU)の取り組みはとても素晴らしいと思って聞いていました。新さんも質問していましたが、個人的に興味があるのは、この大学が大分県の別府にできて13年が経ち、その結果としていま実際に街で何が起こっているのかということです。グローバルとローカルが融け合う、まさに「グローカル」な現場の話をもっと聞いてみたかったです。
――ご自身の研究・関心領域のなかで、もっとも如実に“東京”と“地方”の格差が生じていると思うのはどんなことでしょうか。また、その格差をどうするべきだと考えますか。
伊藤 それは、「移動格差」かもしれません。東京のような大都市は情報網も交通網も高度に発達し、非常に便利かつスムーズに移動することができます。今後、さまざまなネットワーク(網)が日本全体に毛細血管のように伸びていくことで、その格差が少しずつ解消していけばいいと思います。
――この番組では、70年代以降生まれを「ジレンマ世代」と位置づけています。この世代が東京を生きる/地方を生きるうえで、上の世代ともっとも異なってくるのはどんなことでしょうか。
伊藤 インターネットの登場が1995年前後です。ですから70年代以降生まれの世代は、青春時代にテレビゲームやインターネットなどデジタルの凄さを体感している世代ということになると思います。このようなジレンマ世代は、リアルな都市にも住んでいるけれども、リアルとバーチャルな空間を行き来している感覚も強いんじゃないでしょうか。