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2015.04.24
2013.10.23

「いま芸術は…?クリエイター原論2013」番組収録後インタビュー:スプツニ子!

2013年10月27日(日)0:30~1:30〔土曜深夜〕放送予定のニッポンのジレンマ「いま芸術は…?クリエイター原論2013」収録後、スプツニ子!さんにインタビューを行いました。

スプツニ子! (スプツニコ!)

1985年生まれ。アーティスト。ロンドン大学インペリアル・カレッジ数学科および情報工学科を20歳で卒業後、英国王立芸術学院(RCA)デザイン・インタラクション科修士課程を修了。在学中より、テクノロジーによって変化していく人間の在り方や社会を反映させた作品を制作。主な展覧会に、「東京アートミーティング トランスフォーメーション」(東京都現代美術館、2010)「Talk to Me」(ニューヨーク近代美術館(MoMA)、2011)など。2013年よりマサチューセッツ工科大学(MIT) メディアラボ Assistant Professorに就任。

――今回の番組で“もっとも伝えたかったこと”は何でしょうか。

スプツニ子!  これからは、マスメディアだけではなく、個人がソーシャルメディアで受信・発信しながら表現する時代です。私も作品を作る際にわからないことがあれば、科学者やNASAに直接問い合わせたり、製作で人手が足りなければSNSを通じて集めたり、自分ひとりではできないことを表現しています。「ひと」というメディアを介してつながることとかコミュニティを作ることに、私は希望をみています。

 このように、いろいろな分野がつながっていきますので、「アート」とか「デザイン」といった垣根はどんどん無意味になっていくと思います。「アートとはなんぞや?」「デザインとはなんぞや?」などと言っているうちに、どんどん時代に遅れをとってしまうのではないでしょうか。私にとって「芸術とはなにか?」ということよりも、分野を超えてミックスしていき、つながっていくことで起こることのほうが、わくわくします。

 アートマニア、デザインマニアになるのは危険です。まわりを見渡して、今何が面白いのかを考えて、それをアートに吸収していきたいです。

――きょうの番組収録のなかで、気になった話題や発言はありましたか。

スプツニ子!  平野啓一郎さんが、小説において「アートからデザインへ」――つまり、読みやすいインターフェース、受け止めやすい概念といった「デザイン」を提示し、読者がアクセスしやすくしていく必要がある――ということを意識している、とおっしゃって、私がいま最も関心を持っている考えと似ていたことが面白かったです。普段接する人も、文献も、いる場所も異なるのに、結論が重なったのが興味深いです。

――現代、ソーシャルメディアによって作品への評価が見えやすくなっていますが、それに影響を受けることはありますか?

スプツニ子! あまりありません。でも、見た人の間で議論が起きたり、YouTubeのコメント欄に意見を書いていただいたりするのは嬉しいです。「こういうリアクションを起こす人がいるんだ」「人ってこういうことを考えたりするんだな」など、リアクションという名のアート作品を鑑賞している気分になることさえあります。

 たとえば、「生理マシーン、タカシの場合。」だと、「人間の体に手を加えるなんてありえない。ばちがあたる」という意見もあれば、「面白い」という人もいる。Twitterでは、私に対する個人的な批判も混じる。若い女性が評価されることについて裏を読む人がいたり。

 今までは、感想をこんなに可視化できなかったけれど、皆が無意識にアップしている感想のおかげで、人ってこんなふうに動き考えるんだな、とわかることがあります。

 また、そういったリアクションを取り入れてオープンに作品をつくるのも面白いけれど、私のポリシーとして、スプツニ子は「独裁者」として作品に君臨しているので、作品のクオリティをフラットにするつもりはありません。「圧倒的スプツニ子作品」なるものが存在し、そこにたくさんの方がかかわるようなイメージです。ただ、あくまで私がそのような作り方に興味があるだけで、他にも方法はあると思います。

――「ニッポンのジレンマ」は若い世代の活動を発信する場ですが、自分たちの世代と上の世代にはどんな差があると思いますか。

スプツニ子! 世代の差はあまり問題ではなく、50歳、60歳、70歳だけど大学生よりも革新的な考えを持っている、という人をたくさん知っています。MITメディアラボを設立したニコラス・ネグロポンテさんは70代ですが、非常に先見的で新しいことを考えていますし、ほかにもこのような方はたくさんいます。

 ただ、いま何が面白いか、いま何が重要か、というアンテナを持ち続けるには、常に努力が必要で、難しいことです。若い人はその時代に生まれているから、天然のアンテナを持っている、ということはあると思います。そのアンテナを、上の世代がリスペクトしてあげることが重要です。

 私は大学生とワークショップを行うとき、たった5歳や7歳程度の年齢差しかないけれど、彼らが持つ5歳下、7歳下なりのアンテナにしっかり耳を傾けるようにしています。

 もちろん私は私で一生懸命アンテナを立ててはいますが、いま20歳じゃないと感じられないものって、あると思うのです。20歳の彼らは、世界で起きていることを真っ白いキャンバスに描いています。上の世代が何回も描き直しているところを、いきなり描いている人たちのほうが、いい描き方ができると思います。