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2015.04.24
2013.09.24

「“救国”の大学論」番組収録後インタビュー:北川拓也

2013年9月29日(日)0:00~1:00〔土曜深夜〕放送予定のニッポンのジレンマ「“救国”の大学論」収録後、北川拓也さんにインタビューを行いました。

北川 拓也 (キタガワ・タクヤ)

1985年生まれ。楽天株式会社 執行役員。高校卒業後、現役でハーバード大学に合格。数学、物理学科を専攻し、ダブルメジャーで最優等の成績をとり卒業。大学院に進み、今までに15本以上の論文が国際雑誌に取り上げられ、そのうちの3つの論文が編集長に特別な論文として指定された。現在は、楽天でデータサイエンスのチームを率いる。

――今回の番組で“最も伝えたかったこと”は何でしょうか。

北川  学生たちに、自分では見えなかったような新しい幸せや喜びをあたえ、興奮を味わえる場を提供することこそ大学や教育の役割だ、ということです。

――今回の番組で“興味を持った、あるいは、印象に残った発言や話題”はありましたか。

北川  最後に古市さんが「興奮って、感染しますよね」と仰ったのは、その通りだと思いました。教育者は伝道者でもあるので、興奮を感染させる起爆剤のような存在なのかな、と感じています。

 それから、税所君の言っていた、「教育の価値は、これからはやる気の創出に変わっていくんだ」という話には共感しました。コンテンツはそもそも、eラーニングなどインターネット上でもやっていけるので、これから大学の在り方が変わっていくのではないか、と話していたのが印象に残っています。

――教育の役割として「興奮」をキーワードにあげておられましたが、まだ「興奮」を味わったことのない学生には、どうアドバイスしますか。

北川  まず第一に、興奮している人に会うことですね。できるだけ身近な人がいいと思います。飲み友達かもしれないし、やたら興奮してしゃべっている人かもしれない。

 次に、自分が興奮できることを、とにかく増やしていくといいと思います。それは例えばAKBかもしれないし、鉄道かもしれないし、他の趣味かもしれません。何はともあれ、興奮できることが多いのはいいことだ、とぼくは考えています。それがどんな対象であれ、決して卑屈になる必要はありません。
 単純に、興奮できることがたくさんあったほうがうれしいですよね。AKBのように夢中になれる存在が世の中に5千くらいあれば、毎日が楽しくなるはずです。それをできるだけ大切にして、「あ、おれってこんなことに興奮できるんだ」というものを見つけ出すことから始めてみるといいでしょう。物理みたいに遠ざかっていたことも本当は好きかもしれないので、ちょっとずつ自分の心を和らげていくことが大切です。

 それから、興奮している人と一緒に行動するのもいいと思います。例えばAKBのライブに一緒に行ってみると、違った体験ができるかもしれません。自分が興奮できていないのは、入り方が悪かったのかもしれないし、観点が悪かったのかもしれないし、体調が優れなかったのかもしれない。他者から気付きをもらうことがあるように思います。

――どうすれば、日本の大学をもっと「興奮」できる場に変えられるのでしょうか。

北川  まず、めちゃめちゃ興奮して教える教授や先生が少ないと思います。学者なんだから、もっと興奮してほしいですね(笑)。ただ興奮の伝え方はいろいろあって、静かに興奮を伝える人もいますし、いちいち盛り上がっている必要はないんですが、本人が興奮していて、それを的確に伝えることができる人が少ないと思います。

 最近、「テッドトーク(TED Talks)」というのが流行っています。世界で一流の人たちが、自分の成し遂げてきたことの面白さを5分ほどで語るトーク集です。いくつか伝説のトークというのがあって、すごく面白いんです。今の日本の大学では、テッドトークのような「神がかったプレゼンテーション」のできる人が少なすぎる。プレゼンテーションが下手で、たとえ語る本人が興奮していても、それが聞くほうに伝わらない。
 結局は教員のクオリティーを上げるということになりますが、そういう教員をきちんと評価する制度をつくることも必要でしょうね。

――ご自身は、これからどのように教育に関わっていきたいですか。

北川  多くの人たちの興奮を受け止め、それを媒介する人でありたい、という思いがあります。これはぼくの永遠のテーマです。ぼく自身が楽しみたいから、教育に携わってこういうことをやりたいんです。
 興奮の伝え方をみんなに伝えることができたら、と思っています。さらに、興奮する仕方や伝え方をどんどん広めていくことによって、ぼくの知らない幸せを他の人から伝えてもらえるかもしれない、とも考えています。

 その仕組みのつくりかたはいろいろあって、例えばFacebookみたいなサービスによって生まれる感動や興奮があると思う。芸術もその一つのミディアム(媒体)ですよね。具体的な形はこれから考えていきたいんですが、イメージ的には、「朝起きたら、一日の中に10個くらい興奮することが詰まっていて、今日生きることが楽しすぎる」、といった世界観をつくれるのではないか。それが日本の次の革命なのではないか、とぼくは思っています。