「僕らの復興論」番組収録後インタビュー:河村和徳
2013年3月9日(土)0:00~1:15放送のニッポンのジレンマ「僕らの復興論」収録後、出演者のみなさんにインタビューを行いました。
河村 和徳 (カワムラ・カズノリ)
1971年生まれ。東北大学大学院情報科学研究科准教授。静岡県出身。慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻修士課程修了。専門は政治過程論、地方政治論。慶應義塾大学法学部専任講師(有期)、金沢大学法学部助教授を経て、現職。著書に『現代日本の地方選挙と住民意識』(慶應義塾大学出版会)など。
――今回の番組「僕らの復興論」で、ほかの出演者の意見、もしくは会場から出た意見で、印象に残ったものはありましたか?
河村 一つは、藤沢 烈さんの「政治が悪いと言わない」という指摘でした。私は政治学者であるがゆえに、政治・行政の仕組みに目が行きがちで、もっと民間の力で復興を進めていくという指摘は新鮮でした。民間の力を引き出す仕組みが不十分であることは、政治の現場ではあまり論じられていないので、今後考えていきたいと思います。
学生さんがした最後の質問、復興に関わる「本音」についての質問も、印象に残るものでした。被災地にいて教鞭を執る私が、被災地の状況を伝え、被災者・被災自治体にコミットして復旧・復興に貢献していくのは当たり前なのかもしれません。しかし、被災地の政治という貴重な情報を得やすい環境にあって、自らの研究にとってもプラスであるのも事実です。被災地のためだけではなく自分のためでもある、というのが私のスタンスですが、開沼 博さんも藤沢さんも同様なスタンスをとっていることがわかって、少しほっとしました。
――番組の視聴者が、復興のために明日からできることは何でしょうか?
河村 視聴者の方々にも日々の生活があると思いますので、「復興のため」と大きく構えると、何をしたらいいのか、悩んでしまうかと思います。被災地に来ていただくという選択肢もありますが、被災地の情報を集めることや、東北の物産を通販等で買ったりすることも、被災地が日常に戻るうえで有用です。被災地向けの寄付・募金もあります。しかし、被災地に一度も来たことのない方に、「どれかを選べ」と言っても難しいと思います。
私としては被災地ばかりに目を向けるのではなく、「うちのまちで、もし同じような自然災害が起こったら……」と考えてもらいたいと思います。そうすると、自分の住む自治体の防災体制などの課題が見えてくるでしょうし、「自分たちのまちを良くしよう」という気持ちが湧くのではないでしょうか。それを通じて、「被災地の復旧・復興をより深く知ろう、つながろう」という意識が生まれればよいと思います。
――2013年、東北の復興と関連して、ご自身の目標があれば教えてください。
河村 今回の番組を通じて、「自分ができる」ことを考えて東北の復興に関わっていく必要性を改めて強く感じました。大学の教員はどうしても、フルタイムで復旧・復興にコミットしている方よりも、被災者・被災地自治体との間に距離感があります。しかし、この距離感によって、現場に深く関わっている方が見えなくなっているものも、見えてくるかと思います。この距離感を意識しながら、復旧・復興に関わっていきたいと思います。
2013年は、「被災地の記録を残し、そこで得た知見を学生や被災地内外の人々に広く伝えていく」、「行政の委員などを通じながら課題を精査し、改善策を提言していく」などに重点を置いて頑張りたいと思います。