「格差を超えて 僕らの新たな働き方」番組収録後インタビュー:白木夏子
2013年1月1日(火)23:00~25:30放送のニッポンのジレンマ「格差を越えて 僕らの新たな働き方」収録後、出演者のみなさんにインタビューを行いました。
白木 夏子 (シラキ・ナツコ)
1981年生まれ。社会起業家。「HASUNA Co.,Ltd」代表取締役社長。エシカル(人や環境、社会に配慮した)素材でジュエリーブランド事業を展開。
――「格差を超えて 僕らの新たな働き方」の討論に参加されて、印象に残った話題はありましたか? また今回のテーマについて、いちばん言いたかったことは何ですか?
白木
印象に残ったのは、木暮さんのおっしゃっていた「自己内利益」という考え方ですね。これを最大化する働き方を模索していくっていうのは本当にそのとおりだと思うし、私自身がまさにそうでした。
私は、精神的な幸福感というものをより多くの人が高められるような日本社会にしたいと思っていて、それにはどうしたらいいのか、収録中もずっと考えていました。経済的な格差が取り上げられがちですが、精神的な格差の方がこの日本では深刻なのではないかと思えるからです。
今の日本は、海外から帰国すると特に閉塞感を感じます。足を引っ張る人が多いなと思うのです。例えば、成功したり、人よりちょっときれいだったりかわいかったり、頭がよかったりすると妬んだりする文化があるのかなと。そうではなくて、「私、これがやりたいの」と言ったときに「いいね」「頑張ってね」って、「起業したいのだけど」と言ったときに「やろうよ」「やったらいいんじゃない」って。可能性を潰すのではなく、エールを贈れるような社会になれば、目の輝いた若者が増えるのではないかと思うのです。多様な働き方を許せる、様々な価値観を許容できる社会になるといいなと思います。
たとえそれで失敗してしまったとしても、諦めなければ、そして周りからのエールがあれば再起はいくらでも可能だと思います。失敗したことは果敢に挑戦したことの証であり、好きなことがあるのに何もしないよりは、ずっと精神的に豊かな生き方であると思います。
多様な価値観を認められるようになるには「固定概念を捨てる」ことが必要です。例えば「男性は正社員で一家を支えねばならない」「女性は子育ての最初の3年はずっと付きっきりで見なくてはならない」というようなステレオタイプが本当に必要か、いま一度考えてみる。固定概念で自分や他人を縛り付けても、良いことは何もないように思えます。
子育てをしながら働く男性がいてもいいでしょう。男性が別に正社員ではなくても、子育てしながら週3~4日働いて、年収は200万、300万でも、それはそれでいいと思います。女性も同じように働けば、世帯収入は500万円、600万円になりますよね。充分すぎるぐらいの収入だと思います。それで精神的な幸福が得られるのであれば、いろいろな人がもっと生き生きするのではないかと思っています。重要なのは仕事とライフスタイルのバランスを取り「自己内利益」を最大化させてゆくことで、必ずしも働き方の形態や収入の問題ではないと思います。
――白木さんのお話や実際の働き方は、働いている女性へ強い応援のメッセージになると思うのですが、女性にとっての理想的な働き方はどんなものだとお考えですか?
白木 先ほど話に出ましたけど、例えば夫婦とも非正規で年収が多くなくても、精神的な幸福が得られるのなら、そういう働き方でもいいと思います。働き方は多様であって良くて、大企業への就職や正社員に固執しなくてもいいと思います。
女性という立場を活かして、個人事業主でもいいし起業でもいいし、もっと挑戦してもいいでしょう。大企業に勤めながら子育てすると、制度が整っている会社もありますけど、それでもまだ多くの日本企業は働き辛さがあると思います。制度は整っていても、男性上司が多い中で子育てを両立しながらキャリアアップしてゆくのは至難の業であると思います。時短勤務で、周りに「すいません、すいません」と言いながら仕事しなくてはならないとか、子どもが病気になって急に休まなくてはならず周囲に迷惑をかけたりとか、そういう精神的な苦痛を受けるようなことが、やはり多いと思います。
それが個人事業主だったり起業していると、時間はある程度自由に使えますし、会社に子どもを連れていってみんなで面倒を見たりとかもできます。ですから、子育てしながら働く女性には、フリーランスになるとか起業するという道を、私はお薦めしています。
また、仕事の専門性を身につけることも非常に重要だと思います。今はどんな大企業でも潰れるときは潰れますし、いつ会社から放り出されても、産休というブランクがあっても、専門性があれば社会に戻りやすい。これから就職される方、特に女性の皆さんには、ブランクが途中にあることを見据えて、自分の専門性を早いうちに見出してキャリアを積んでゆくことを強くお薦めします。