「格差を超えて 僕らの新たな働き方」番組収録後インタビュー:安藤至大
2013年1月1日(火)23:00~25:30放送のニッポンのジレンマ「格差を越えて 僕らの新たな働き方」収録後、出演者のみなさんにインタビューを行いました。
安藤 至大 (アンドウ・ムネトモ)
1976年生まれ。経済学者。現在、日本大学准教授、政策研究大学院大学客員准教授。内閣府規制改革会議の専門委員として雇用労働分野等を2007年から2010年まで担当。シノドスジャーナルや日本経済新聞の経済教室への寄稿など、一般向けの執筆も多数。専門は契約理論・労働経済学・法と経済学。
――「ニッポンのジレンマ」初出演の感想をお聞かせください。
安藤 想定していたよりも長時間の収録でしたね。しかし、出演者の皆さんが持っている様々な考え方について知ることができたため、とても有意義な時間でした。
今回のテーマは「格差を越えて、僕らの新たな働き方」というものです。個人的には、「新たな働き方」についてお話したいことがたくさんありました。しかし議論の前提が共有されていなかったため、幾分表面的なやりとりになってしまったことを残念に思います。
働き方についての皆さんの主張は、大きく二つに分けることができます。一つは、個人が実践している新しい働き方についての話です。これは多様な働き方を実現すること、またその妨げとなる要因を減らすことが主題です。そしてもう一つは、国民の多くを占める普通の人たちの働き方についてどう考えるかです。私は後者についての議論を深めたかったのですが、前者についての議論が中心となってしまい、歯がゆい思いをしました。
今後もし機会があれば、私たちの働き方についての様々な論点をうまく切り分けた上で、より一層丁寧な話し合いをしたいですね。
――私たちが今後「働くこと」を考えるためには、まず何が必要でしょうか?
安藤 個人として「自分が働くこと」について考えるときも、「雇用に関する制度全体について考える」ときにも共通して大事なのは、「知識」と「想像力」だと思います。
まずは知識について。例えば労働法の内容や労働者に対する公的な支援制度等について、皆さんはどのくらいご存知でしょうか。もちろん個々人がいろいろと知っているほうが良いのですが、実際には、個人で様々な知識を習得することには手間と時間がかかります。よって最低限の知識を越える部分は、知っている人に聞くことが大事でしょう。一人で抱え込まずに分からないこと困ったことがあれば専門家に相談することです。
そして、想像することも大切です。働くことには、経営者や同僚、そしてお客さんなど様々な人間と接することが伴います。誰がどんな立場にいて、どのように考えるだろうか、相手の立場に立って考えてみることが必要となるでしょう。
社会制度について考える際にも、同様に想像力は不可欠です。人間には限界があります。自分が経験したことも見たこともない現実に想像を巡らすというのはとても難しいことです。収録時に安藤美冬さんが「自分には格差が見えない。周囲に困っている人はあまりいない」といった趣旨の率直な発言をされていましたが、これには好感が持てました。自分には見えていないものがあることを知っていれば、様々な立場の人の話を聞いてみようと思うでしょうし、データに基づく議論の重要性にも気づくことができます。
これから放送を見る皆さんにも、私たちの働き方について、ぜひ一緒に考えて頂きたいですね。