2つの「想像力」をフルに使って! 西井 美保子
9月1日 0:00~放送予定のニッポンのジレンマ「僕らの楽しい資本主義」収録後、出演者のみなさんにインタビューを行いました。
西井 美保子 (ニシイ・ミホコ)
1986年生まれ。電通総研研究員。主に10~20代の若年層を対象に消費心理・動向分析を研究している。著書に『パギャル消費』(日経BP、2011)がある。
creationとimaginationが世の中を変える
―「僕らの楽しい資本主義」について、感想をお願いします。
西井
上の世代の方々から、「若者は消費しない」とか「嫌消費」とか言われています。若者は消費しない、というステレオタイプで見られがちです。ステレオタイプというよりは、現実に可処分所得が下がってきて、若者が消費できる額が限られてきているのです。限られた所得の中で、必要のないところは減らさなくちゃいけないので、全体的に消費は落ちています。だけど、若者は「ここだ!」と思うポイントにはどかんとお金を使います。本当は、若者は消費するのが大好きなんです。
購買へと向かうスイッチを仕掛けるには、若者を面白がってみないといけないなと思います。心のツボのスイッチが、これまでと変わっただけなのです。こうしたボタンのかけ違いが、頻繁に起こっているのでしょう。
このかけ違いを、私たちを媒介にして面白がっていただきたいなと思います。そうすることで、消費も活性化するし、間違った伝え方をして損をする、ということはなくなると思います。
―上の世代に伝えたいことはありますか。
西井
やはり若い人たちをもっと面白がってもらいたいなと思います。私は、広告代理店でターゲットインサイトを戦略立案やコンサルティング業務に活かす仕事をしています。企業で戦略を考えている“大人たち”に向けて、若者問題研究所(※1)やGAL LABO(※2)の知見を生かして、どう若者とコミュニケーションをとり、プランニングしていくかということを日々提案しています。
その中で、上の世代の人たちに、こういう若者もいるんだよとか、説得していく難しさを感じています。「こういう言語でしゃべる人たちには、こういう風なコミュニケーションをしなくてはいけない」と言うと、「なんで?」って、思考停止してしまう人たちが多いのです。
―今回の放送を通じて、同世代に伝えたいことがあれば教えてください。
西井
何かを変えたい、という課題に対しての「想像力」って、2つあると思います。creationとimaginationですね。たぶん、imaginationの部分が足りない人が多いのだと思います。imaginationをフルに使うと、世の中が変わりcreationにつながっていくと思うので、この2つの「想像力」を、うまく使って欲しいということを伝えていきたいですね。
人生って、スタートはマイナスで、マイナスをゼロにしていくことは、みんな生きるうえでやっているんです。今回の収録で出会った人たちは、そこからさらにもがいて、模索して、マイナスをプラスに変えようとしている人たちです。
もがいた結果、世の中が変わっていくこともあるかもしれないけれど、それよりも模索していること自体が大事だと思います。
私はいま企業に勤めていますが、明日にはどうなるかわからない。変えるということを忘れてしまうと、何かをやめることも出来ないし、始めることもできなくなってしまう。変えようとすることはとても大事なことだと思います。
―今、欲しいものはありますか?
西井
家です。新しく家庭を作るときに、借り物よりも自分のものの方がいい、と考えていて、その感覚が「所有」なのかなって思います。
これまで、シェアハウスは何回も経験しているんですけど、やはり自分の家にしかない空気感っていいなと思います。一見、シェアの意識とは相反しますが。家族と色んなことをシェアできる空間は欲しいです。モノのシェアというよりも、場所の役割を分かち合うということでしょうか。