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2015.04.24
2012.12.25

安倍総理と朴槿恵大統領は「新・日韓新時代」を拓けるか ――日韓ダブル選挙でどうなる? 日韓関係【第4回(最終回)】:浅羽祐樹

衆議院選挙の3日後、12月19日に韓国大統領選挙が行われた。新しい政治リーダーの下、日韓関係はどうなるのか。そもそも、対日政策は大統領選挙の争点になっているのか。報道からだけでは見えてこない本当の「韓国の政治事情」を、韓国政治研究者の浅羽祐樹氏が4回にわたって解説する。プレーヤーの行動原理を政治システムから読み解く浅羽氏の論考は、混迷を極める日本政治の参照項としても有効なはずだ。

浅羽 祐樹 (アサバ・ユウキ)

1976年生まれ。新潟県立大学政策研究センター准教授。専門は比較政治学、韓国政治、国際関係論、日韓関係。著書に『したたかな韓国~朴槿恵時代の戦略を探る』(NHK出版新書)、木村幹・佐藤大介両氏との共著に『徹底検証 韓国論の通説・俗説』(中公新書ラクレ)。

 衆院選と韓国大統領選が終わり、日韓の新リーダーが決まった。安倍晋三総裁は明日26日にも第96代内閣総理大臣に任命される。朴槿恵(パク・クネ)新大統領との間で、日韓関係はどうなるのか。その「見通し」を持つための「視座」を考えたい。

■「日韓基本条約」の高度な政治判断

 朴槿恵は2013年2月25日に第18代韓国大統領に就任する。任期は5年間で、2018年まで韓国政治をリードする。安倍新総理も、来年7月の参院選を乗り切れば、2016年12月の次期衆院選まで、小泉政権以来はじめての長期政権が視野に入ってくる。日韓ダブル選挙で誕生した安倍と朴のコンビは、任期を共にしそうな分、まずは「個人的な信頼」を築き上げた上で、中長期的な展望と戦略を以て、日韓関係という大事に臨んでほしい。朴新大統領は「『信頼』と『約束』」を何よりも重視する政治家であり、当選の翌20日にも、「信頼外交」を再び強調した。双方が原則論的な立場を有する個別の懸案事項は、その中で、適度な比重で位置付け、全体像を損なわないように常に慎重に取り扱うのが望ましい。

 その意味で、2015年、50周年を迎える日韓基本条約が重要である。1965年、日韓両国は、日韓基本条約と諸協定を結んで国交を正常化した。ときの総理は佐藤栄作、韓国大統領は朴正煕(パク・チョンヒ)であった。その際、1910年の韓国併合条約やその後35年間に及ぶ統治の法的性格については、「もはや無効」(日韓基本条約第2条)であるとして、日韓別々に解釈し、それぞれ自国民に説明し、互いに干渉し合わないことで合意した。日本は、韓国併合条約は合法的に締結されたが、終戦とともにその効力を失ったとみなした半面、韓国は、「日帝強占期」はそもそも不法であったという立場をとった。
 つまり、朴正煕大統領(締約当時)は、あえて「正しい歴史認識」で統一しようとはせず、「合意できないことに合意する(agree to disagree)」ことで、二国間の法的枠組みを成り立たせるという高度な政治的判断を示したわけである。娘の槿恵は、当時、13歳だった。

■竹島問題は「ある」が、独島問題は「ない」!?

 この夏以降争点になっている竹島領有権問題や慰安婦問題も、当初は、「巧く」処理され、管理された。竹島は、交渉過程で最後の最後までもつれたが、「両国間の紛争」(日韓紛争解決交換公文)について、やはり、日韓双方が異なる解釈をすることで決着した。日本は、「外交上の経路を通じて解決す」べき「紛争」は竹島領有権問題しか存在しないとした半面、韓国は、「独島をめぐる領有権紛争は存在せず、独島は外交交渉および司法的解決の対象にはなり得」(韓国外交通商部の広報冊子『韓国の美しい島、独島』)ないという立場だった。「文書」による密約があったかどうかはともかく、それ以降、双方、異なる主張をしても、互いに問題にすることはせず、同時に、「現状status quo」を変える試みは控えるという「精神」が共有されてきた。

■自国の憲法裁判所にNOを突きつけられた韓国大統領

 慰安婦問題は、やや性格が異なる。「両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題」は「完全かつ最終的に解決されたこととなる」(日韓請求権協定第2条第1項)と謳われている。これは、一見、曖昧さを残さない「完全な合意(complete agreement)」である。日本政府や裁判所は、慰安婦など個人の請求権も含まれているとして、その訴えを認めてこなかった。韓国政府も当初は異議を申し立てていなかった。ところが、2011年8月、韓国の憲法裁判所が、この問題で韓国政府が何もしないのは「不作為」であるとして違憲判決を出して以来、大統領は「外交上の経路を通じて解決」(同協定第3条第1項)を試みることが義務となった。朴新大統領もこの判決に拘束され、自ら「作為」し、日本政府にも「作為」を求めてくる。

■「見通し」と「見晴らし」のよい日韓関係へ

 今や、これまで日韓関係をかたちづくり、安定させてきた日韓基本条約と諸協定そのものが問われるようになっているのである。もちろん、だからといって、ただちにそれに代わる新しい取決めが必要なわけではない。ただ、かつては、総理と大統領のリーダー間だけで話が済んだかもしれないが、韓国が民主化し、草の根レベルの交流やぶつかり合いも活発になった今、もはや、そういうやり方は通用しなくなった。

 安倍新総理と朴新大統領には、日韓基本条約50周年の2015年に備えて、今後の50年間の礎を築くという覚悟で今から準備を始めてほしい。さらに、そうした「見通し」とともに、二国間関係として視野を限定するのではなく、「国際社会に共に貢献する日韓関係」という「見晴らし」も大切だ。

 「見通し」と「見晴らし」のよい「視座」から、韓国に、世界に、臨みたい。

【了】

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