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2015.04.24
2012.12.07

勝敗も政策も「頭数」しだい?! ――日韓ダブル選挙でどうなる? 日韓関係【第2回】:浅羽祐樹

衆議院選挙の3日後、12月19日に韓国大統領選挙が行われる。新しい政治リーダーの下、日韓関係はどうなるのか。そもそも、対日政策は大統領選挙の争点になっているのか。報道からだけでは見えてこない本当の「韓国の政治事情」を、韓国政治研究者の浅羽祐樹氏が4回にわたって解説する。プレーヤーの行動原理を政治システムから読み解く浅羽氏の論考は、混迷を極める日本政治の参照項としても有効なはずだ。

浅羽 祐樹 (アサバ・ユウキ)

1976年生まれ。新潟県立大学政策研究センター准教授。専門は比較政治学、韓国政治、国際関係論、日韓関係。著書に『したたかな韓国~朴槿恵時代の戦略を探る』(NHK出版新書)、木村幹・佐藤大介両氏との共著に『徹底検証 韓国論の通説・俗説』(中公新書ラクレ)。

 韓国の政治家は将来から逆算して行動を選択していると【第1回】で論じた。その不確実な将来に対して、最も確実に推定できて、社会のそこここに重大な影響を及ぼすのが人口動態変化である。野田総理が言うように、「決める政治」が「明日への責任」を負うのであれば、こんどの衆院選で各政党は、何よりも人口動態変化への具体的な対応策を示す必要がある。有権者はそこをよく見極めたい。


■人口動態が後押ししたオバマの再選

 たとえば、移民国家アメリカでは全般的な人口の増加が続いているが、この変化は大統領選挙におけるオバマ再選と関係している。オバマは、前回と比べて白人票を減らしたが、共和党よりも民主党の候補を圧倒的に支持する黒人・ヒスパニック・アジア系などマイノリティからの支持を固めたのが功を奏した。

 この4年間、ヒスパニック移民をはじめマイノリティの増加率はマジョリティを上回っている。エスニックごとに支持する政党の比率に変化がないとしても、この人口動態変化はそれだけで民主党に有利である。この趨勢が続けば、2050年にはマイノリティとマジョリティが逆転すると言われている。ヒスパニックに対する移民政策を大転換しない限り、共和党がじり貧となることは確実である。


■韓国有権者の分断線は世代

 韓国大統領選挙の場合、分断線(fault line)はエスニックではなく世代である。KBS(韓国のNHK)による世論調査によると、事実上一騎打ちになっているセヌリ党の朴槿惠(パク・クネ)と民主統合党の文在寅(ムン・ジェイン)の支持率はそれぞれ46.8%と44.1%で、大接戦である。しかし、世代別に見ると、顕著な差があることが分かる。50代以上は圧倒的に朴を支持している半面、30代以下は文を支持している。40代は文の支持がやや多いが、両者、拮抗している。




 こうした「世代戦」は、10年前の大統領選挙と同じである。当時、50代以上はセヌリ党の前身であるハンナラ党の李会昌(イ・フェチャン)を支持した半面、30代以下は民主党の盧武鉉(ノ・ムヒョン)を支持した。結局、40代がやや多く支持した盧がわずか57万票差で当選した。5年前は、全ての世代で李明博(イ・ミョンバク)に対する支持が圧倒していた。


■「少子高齢化」国家が抱える共通問題

 「少子高齢化」という人口動態変化を日韓両国は共有しているが、遅れてきた韓国の方が、変化が激しい。65歳以上の高齢者人口比率が7%を超える「高齢化社会」になったのは日本より30年も遅い2000年だが、2018年には14%超の「高齢社会」、2026年には20%超の「超高齢社会」になる(日本は2007年にすでに超高齢社会になっている)。出生率も2011年現在1.23で世界最低水準である。2015年には、生産年齢人口(15歳から60歳までの人口)よりも従属人口(それ以外の年齢層の人口)が上回る、いわゆる「人口オーナス」に転じる。

  選挙とは、結局のところ「頭数」である。このシンプルだがパワフルな計算式で勝負が決まる。

    世代別有権者数×世代別投票率×世代別得票率


 日本でも韓国でも、年齢が上がれば上がるほど投票率が高くなる。そうなると、高齢層は全有権者における年齢別有権者比率より年齢別投票者比率が上回り、「過大代表(over-represented)」されている半面、若年層は、逆に、有権者比率より投票者比率が下回り、「過小代表(under-represented)」されている。選挙に行かないと、それだけで世代間の1票の価値を自ら下げることになってしまう。
 さらに、今後、高齢層の有権者数は確実に増加していく。少子高齢化が進む社会において、高齢層から支持される候補者や政党が有利になるのは、人口動態変化の論理的帰結である。


■衡平な政策決定のために

 政策的帰結も深刻だ。格差が拡大するなか、今回の韓国大統領選挙では「福祉」がはじめて争点になっている。
 しかし、たとえ30代以下の支持者が多い文が大統領になったとしても、教育や出産・子育てより、医療や介護を優先する「シルバー民主主義」が強まるだろう。10年前、50代以上の有権者は29.2%だったが、10ポイント以上増え、いまや39.6%を占めているからだ。

 老いていく民主主義国家の若者には希望がないのか。
 そう早合点する前に、こんなデータがあることを知ってほしい。韓国では、2006年の地方選挙から19歳も投票できるようになった。大学に不在者投票場が設置され、SNSを駆使した選挙戦が盛んなことも手伝って、19歳の投票率は20代全体の平均よりも高い。
 人生の持ち時間が一番長い有権者こそ、はるか遠く先の先まで見通して、まずは投票に行くことがそれだけ切実である。

参考:(財) 明るい選挙推進協会「衆議院議員選挙年齢別投票率の推移」



【第3回】に続く…

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