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2015.04.24
2012.10.17

宗教学初学者のための書籍案内―宗教学から見る今日の社会 第4回(全6回) 大田俊寛

宗教への問いは、現代社会に必要なのか――? 2011年に『オウム真理教の精神史』(春秋社)を出版し、宗教研究の再生に挑んだ気鋭の宗教学者・大田俊寛。理論的な考察に徹することでみえてくる、現代社会の宗教の姿とは。宗教学の今日における意義と可能性を熟考する。

大田 俊寛 (オオタ・トシヒロ)

1974年生まれ、宗教学者。埼玉大学非常勤講師。著書に『オウム真理教の精神史』『グノーシス主義の思想』(ともに春秋社)など。

Q,宗教学を学ぶために、おすすめの初学者向けの本はありますでしょうか。

A,人間が有する文化や技術というものは、大ざっぱに言えば、それが「進化」しているかどうかはさておき、歴史が積み重なるにつれて次第に複雑化・精緻化する傾向にあります。そしてそれは、宗教も例外ではありません。人々は一般的に、古代の事象よりも、自分が慣れ親しんだ近現代の事象の方が簡単に理解できると考えがちですが、実際にはそうはいかないことが多い。なぜなら、現代的な事象は、長い歴史の積み重ねの結果として現れているため、それを理解するためには、その前提となる過去の経緯を押さえておかなければならないからです。現代宗教の例で言えば、そのテーマを直接扱う前に、そもそも宗教は原始的な社会においてどのような役割を果たしていたのか、古代や中世に宗教がどのような仕方で発展し、近代における宗教の位置づけにはどのような特殊性があるのかを把握しておかなければ、近現代の宗教に対して客観的にアプローチすることはできないということになります。その手続きを踏まえておかなければ、些末な事実をひたすら平面的に羅列していくか、主観的な好き嫌いや思いつきを吐露するだけに終わってしまうのではないでしょうか。

 こうした理由から、初学者に勧めたいのは、まずは原始的で単純な社会において、宗教がどのような役割を果たしていたのかを勉強することです。私が学生によく推薦しているのは、加地伸行『儒教とは何か』(中公新書)や、フュステル・ド・クーランジュ『古代都市』(白水社)といった書物です。これらの書物では、宗教の原始的形態の一つと考えられる「祖先崇拝」について概説されていますので、それに目を通せば、先ほど述べた「信仰に基づく社会の構築」のメカニズムを一通り理解することができると思います。また、福田歓一『政治学史』(東京大学出版会)笹倉秀夫『法思想史講義』(東京大学出版会)といった優れた通史を読み、思想史の全体像をある程度正確に押さえおくのも重要です。ある物事について「客観的」に考察するということは、心がけ次第でできるものでは決してなく、それを可能にするための歴史的・理論的視座を確保する必要があるということを、あらためて強調しておきたいと思います。

第5回 「カルト」とは何か? に続く

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