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2015.04.24
2012.10.03

なぜ、宗教学を志したのか―宗教学から見る今日の社会 大田俊寛  第2回(全6回)

宗教への問いは、現代社会に必要なのか――? 2011年に『オウム真理教の精神史』(春秋社)を出版し、宗教研究の再生に挑んだ気鋭の宗教学者・大田俊寛。理論的な考察に徹することでみえてくる、現代社会の宗教の姿とは。宗教学の今日における意義と可能性を熟考する。

大田 俊寛 (オオタ・トシヒロ)

1974年生まれ、宗教学者。埼玉大学非常勤講師。著書に『オウム真理教の精神史』『グノーシス主義の思想』(ともに春秋社)など。

Q,大田さんは、なぜ宗教学を専門とされたのですか。

A,私自身の研究歴は、あまり褒められたものではありません。もともとは、グノーシス主義と呼ばれるキリスト教の異端思想、特に、一九四五年にエジプトで発掘された『ナグ・ハマディ文書』の内容に惚れ込み、その思想の可能性を解明してみたいと思ったことが、研究の原点でした。その当時はただ、グノーシス主義に関心があるだけで、率直に言って、宗教や宗教学そのものはどうでも良かった。しかし、『グノーシス主義の思想』(春秋社)という処女作で書いたように、研究の結果明らかになったのは、グノーシス主義はきわめて鋭利で奥深い思想でありながら、その運動は必然的に失敗せざるをえないということでした。また、その反面、グノーシス主義の論敵であったキリスト教正統派の神学についても学び、その精緻さや卓越性に徐々に目を開かされていきました。中世のヨーロッパ社会において、キリスト教は社会の根幹たる位置を占めていたわけですが、私はキリスト教研究を通じて自分なりの仕方で「信仰に基づいて社会が構築される」ということについて学ぶようになり、そこから宗教全般に対する関心も芽生えてきたのです。

 日本の人文学が迷走しがちな理由の一つとして、キリスト教神学に対する正当な認識があまりにも欠けているということが挙げられると思います。キリスト教は、現在でもなお世界最大の宗教であり続けており、また近代の諸制度も、キリスト教世界で築き上げられたものを「換骨奪胎」することによって生み出されている。社会というものが、そもそもどのような仕方で構築されるのか、という基本的な事柄を理解するためにも、キリスト教神学の骨格を理解しておくことは必要不可欠です。しばらく前の日本では、「脱構築」の思想が流行していましたが、そもそも「構築」の意味や機能に関する理解がまったく共有されていない状態で「脱構築」について論じられていたため、上滑りした議論が続いていました。人によって評価が分かれると思いますが、私の見解では、こうした思想の流行は、まったくの無意味だったとしか言いようがありません。前回の話とも重なる点ですが、基礎的な事柄を十分に理解しないまま、闇雲に「応用問題」を解こうとする研究者が実はとても多いということが、人文学の不毛さを助長している要因の一つであると思います。

第3回 宗教書ブームについて に続く

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