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2015.04.24
2014.04.30

「特別会計」という謎の予算について――30代のための財政入門【6】

月収30万しかないのに、借金をしまくって毎月53万円使って暮らしている人。 それが現在の日本だ! という衝撃の事実が、前回判明しました。 そのショックから立ち直るヒマもなく、今度は400兆円もの「特別会計」という 謎の存在が目の前にたちはだかります……。

――前回、国の会計は一般会計の95兆円だけではなくて、別に400兆円以上もの「特別会計」というのがあると教えてもらいました。
どうして一般会計のほかにわざわざいくつも予算をつくって、ややこしいことをするんですか?

小黒 おっしゃるとおり、本来であれば、予算は一つのほうがスッキリするに決まっていますよね。
一般会計予算は、税や公債などを財源として受け入れ、社会保障、地方交付金、教育、公共事業、防衛など国の基本的な政策の経費を賄う会計ですが、国の事業はそれ以外にもひじょうに広範囲にわたっています。
さらに、その内容も複雑化しているので、事業によってはその歳入・歳出を一般会計と区分し、別の会計に計上する方が、個々の事業状況や資金の運用実績などが明確となる場合もあります。 それで一般会計とは別に、特別会計があるんです。

■事業別に管理している「特別会計」

―― 家計でいえば、使いみち別に封筒に分けて管理しているお金、みたいなイメージですか?

小黒 そうですね。食費や光熱費などの一般家計費(一般会計)もあれば、目的別に予算を管理したいもの(特別会計)もありますよね。学資とか旅行資金を毎月1万円ずつ積み立てていたりすれば、フローで1万円の支出になり、積み上がっているぶんはストックとなります。
今月はちょっと食費がかかりすぎちゃったので、1万円の学資積立金を食費に回そう、なんてことがあると、特別会計から一般会計に1万円繰り入れとなる。そんなイメージです。

―― じゃあ、あくまで家のなかでのやりとりなんだけれど、家計簿上は費目や別口座のあいだでやりとりがあって、お金の動き(収入と支出)が増えているということですか。

小黒 そういうことです。
特別会計の要件には3つあって、
①国が特定の事業を行なう場合(例:年金特別会計)
②特定の資金を保有してその運用を行う場合(例:財政投融資特別会計、外国為替資金特別会計)
③その他特定の歳入をもって特定の歳出に充て一般の歳入・歳出と区分して経理する必要がある場合(例:国債整理基金特別会計)
に限って特別会計の設置が認められます。
いま、特別会計として設置されているものは18あって、下の表のとおりです。 

特別会計の種類

特別会計の種類

―― 「特別」なわりには、えらいたくさんあるんですね。各特別会計の名称のあとにカッコ書きで省庁名が書かれていますが?

小黒 それは、特別会計を所管する府省名を意味します。つまり、特別会計というお財布の管理を任されているということですね。

―― 「東日本大震災復興特別会計」(2013年度新設)などは、恒常的なものではないですし特定目的ですから別会計なのはまだ納得いきますが、ほかの多くのものは、もうちょっと整理できるんじゃないかと思ってしまいますけれど。

小黒 そうですね。一般会計予算は資金繰りが苦しいですが、特別会計予算には余裕がある時代があり、昔、「母屋でおかゆをすすっているときに、離れですき焼きを食べている」という意見もありました。
このために特別会計改革が進み、これでもまだ、整理されたほうなんですよ。戦後は最大で45、行政改革が行われる前の2006年度には31ありましたから……。

特別会計の数の推移

(出所)財務省資料

(出所)財務省資料

■特別会計の規模は一般会計の約4倍!

―― 総額も、どうして本家の一般会計額の4倍近くにふくれあがっているんですか?

小黒 総額が大きい理由は、国債の償還を行うための「国債整理基金特別会計」(約200兆円)や、年金や健康保険などの資金を管理する「年金特別会計」(約80兆円)などの予算規模が大きいからです。
各々の特別会計の詳細や資金の流れは財務省が公表している「特別会計 ガイドブック」をみるとある程度理解できるはずです。
また、特別会計は、一般会計予算のみでなく、他の特別会計とも相互に繰り入れが行われています。 例えば、「国債整理基金特別会計」では、国の債務を一括管理するため、一般会計(国債)や他の特別会計の借入金(例:年金特例国債や東日本大震災特別会計の復興債)などの償還も行っていて、相互に繰り入れが行われています。

―― たしかに、あちこちから借金していると、総額でどれくらい返さなくちゃいけなくなるか、わからなくなりそうですもんね。

小黒 それに、家計でも金利の安いローンが見つかれば借り換えたりしますよね。国も借り換えをしたりするんですよ。そういう資金移動でも会計額は大きくなります。
このような重複を除くと、一般会計予算と特別会計予算の純計はここ数年で220兆円~240兆円くらいになるんです。

―― それにしても予算ってホントに複雑ですね。国民に理解してもらおうという気がないようにしか思えないんですけど。

■本当の予算規模は?

小黒 国のほうもそれはわかっていて、財務省は、各会計予算の歳出・歳入を単純に合計した「総計」だけでなく、総額から会計間取引の重複分を除いた予算の「純計」を公表しています。本年度予算でいうと、国の一般会計と特別会計の純計は237兆円で、その内訳は下のようになります。

図4-予算の純計内訳

―― 全体の4割近くが「国債費」ですか!
 純計にしたら、ちょっとは借金の割合が軽くなるかと思いましたけど、一般会計でも4割くらいでしたから、深刻度はあまり変わりませんねえ。

小黒 そうですね。「総予算を効率化・削減すれば、借金返済に必要な予算は捻り出せる」という期待は多くの人がもつものです。 実際、「増税をせずとも、効率化すれば借金返済できる」と主張する人もいます。

―― それはできないんですか?

小黒 残念ながら、それは「幻想」ですね。 「増税しなくてOK」論は、広く支持を得やすいので流布しがちですが、現実はそんなに甘くない。どうしてなのか、次回じっくりお答えしましょう。

――――次回に続く
●本連載では、税金、年金、社会保障、財政にまつわる質問を募集しています。当サイト公式ツイッターアカウント @dilemmaplus あてに #zaiseiQ のハッシュタグをつけてツイートしてください。

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