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2015.04.24
2012.12.26

「格差を超えて 僕らの新たな働き方」番組収録後インタビュー:宇野常寛

2013年1月1日(火)23:00~25:30放送のニッポンのジレンマ「格差を越えて 僕らの新たな働き方」収録後、出演者のみなさんにインタビューを行いました。

宇野 常寛 (ウノ・ツネヒロ)

1978年生まれ。評論家、「PLANETS」編集長。著書に『ゼロ年代の想像力』(ハヤカワ文庫JA)、『リトル・ピープルの時代』(幻冬舎)など。

――「格差を超えて 僕らの新たな働き方」で、他の出演者のコメントで印象的だったもの、また特に伝えたかったことを教えてください。

宇野   安藤美冬さんが「私は格差について実感がない」とおっしゃったことですね。こういう番組に出るとみんな“いい子ちゃん”になりたいから、そうは言わないですよね。でも、彼女は言った。その一点をもって、僕は彼女を信用します。いちばん印象的だったことをピックアップするなら、そこですね。こういう議論をすると必ず「俺は本当の弱者を知っているぜ」というカードを切って優位に立とうとする人が出てくる。でも、そういう人に限って「じゃあ自分は?」と聞かれると何も言えなかったりする。だから、こういうときは正直に自分の立場はこうだ、だからこう見えている/見えないでいる、って話すしかないと思うんです。

――個人を変えることと社会を変えることをつなげるのは難しい、という話の中で、「昼の世界と夜の世界」という表現を使っていたのが印象的でした。

宇野 「昼の世界と夜の世界」っていうのは、僕と濱野智史との共著『希望論』のあとがきで、彼が用いた言葉です。
 「昼の世界」とは、要は戦後社会のことですね。冷戦下、55年体制下の「市民社会」と、ものづくりと日本的経営に支えられた「企業社会」を中心にした世界のことです。対して「夜の世界」というのは、ポスト戦後的な社会です。ここでは“失われた20年”に逆に伸びていったインターネットやエンターテインメントの世界に才能が集まっている。ただ、僕はこの言葉の定義を拡大して使用しています。「昼の世界」とは団塊世代を中心とした旧い戦後的な社会、「夜の世界」とは団塊ジュニア以下を中心とした新しいポスト戦後的な社会、です。
 今の日本は「昼の世界」的な社会観をもって生きている人と、「夜の世界」的な社会観をもって生きている人に大別されると思います。同じ列島に二つの世界が重なり合って存在している。
 いま日本で起こっていることは、要するにとっくの昔に耐用年数を過ぎた戦後社会のシステムが、もう二十年くらい更新されていないってことなんですよね。これは「夜の世界」が台頭しはじめているにもかかわらず、「昼の世界」のロジックで社会全体が支配されていると言い換えることができる。
 たとえばいまだに終身雇用制度のもと、正規雇用のサラリーマンとして働くお父さんと専業主婦のお母さんと子ども2人がいる……といった家庭を標準だとする考えが根強いですよね。でも、これって戦後的な旧い「昼の世界」の家族像だと思うんです。新しい「夜の世界」には通用しない。「夜の世界」を生きている人たちは持ち家志向も低いし、家族構成も多様です。共働きが基本で、情報収集もソーシャルメディアが中心、買い物もネットで……といった新しいライフスタイルを持つ人たちで構成されています。でも今の日本のシステムはまったくこうした新しいライフスタイルや価値観に対応できていないと思う。

 僕はこういった番組に呼ばれると、「こんな制度にしたほうがいい」などと言って、「昼の世界」の説得、つまり体制内改革を試みるんです。実際に、僕に声をかけてくれる人は大河ドラマの『平清盛』でたとえると“平家”にあたる人たち=体制内改革者だと思うんですよね。それに対して、僕は全力で応えなきゃいけないと思うんですけれど、申し訳ないけれど最後の最後の最後ではこういう体制内改革って信じていないんですよ。もちろん、革命=左翼的な似非ロマンティシズムは問題外です。じゃあどうするかというと、やっぱり“源氏”なんですよ(笑)。そもそも僕はインターネットの評論サイトと同人誌を自分で立ち上げて世に出てきた人間なんです。アカデミズムや大手マスメディアとは隔絶された世界、完全に「夜の世界」の住人です。だから最後の最後は、猪子さんのおっしゃっているとおり、自分たちで勝手に新しいしくみ、新しい世界を作ってやっていく、そしてそれが大きくなっていつの間にか国全体を支配する、というシナリオの方に惹かれるんですよね。要は、鎌倉に幕府をつくる“源氏”のほうを信じているんです。

 今回の話で、萱野さんと猪子さんがそれぞれ「昼」と「夜」の代表だとすれば、もちろん萱野さん的な回路を捨てる気はまったくないけれど、僕はたぶん最後の最後では猪子さんのほうに賭けるんだと思う。でも今現在の「夜の世界」は「昼の世界」に数の力でも金の力でも権力でも、正面からぶつかると必ず負けるんです。だから、目に見えないもの、たとえば想像力で勝つしかない。たとえばNHKさんも単純に視聴率のことだけ考えていたらEテレで若者向けの討論番組なんてやらないで、BSプレミアムで「プロジェクトX」とか「ALWAYS 三丁目の夕日」とかリピート放送していればいいと思うんですよ。でも、それじゃあつまらないでしょう? だから必ず「昼の世界」に所属している人たちにも僕たち「夜の世界」の論理と想像力にワクワクしてくれる人が出てくる。そうやって彼らをワクワクさせることで、味方につけていきたいですね。

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