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2015.04.24
2015.02.24

「資本主義のジレンマ大研究」番組収録後インタビュー:萱野 稔人

2015年2月28日(土)00:00~01:00[3月1日(日)深夜]放送予定のニッポンのジレンマ「資本主義のジレンマ大研究」収録後、萱野稔人さんにインタビューを行いました。

萱野 稔人 (カヤノ・トシヒト)

1970年、愛知県生まれ。哲学者。パリ第十大学大学院哲学研究科博士課程修了。現在、津田塾大学学芸部国際関係学科准教授。朝日新聞 「ニッポン前へ委員会」委員。著者に『国家とはなにか』(以文社)『権力の読みかた』(青土社)『ナショナリズムは悪なのか』(NHK出版)ほか多数。

――今回の番組で“最も伝えたかったこと”は何でしょうか。

萱野 私は「こうすれば未来が開ける」と言ったような話はあまり好きではありません。そういう風なことを言っても本当に未来が開けるかわかりませんし、実行しなければなにも意味がないからです。ですから、「べき論」を語るよりも、「我々の社会の根本を規定している資本主義という仕組みを考えるということはどういうことか」について語りたかった。資本主義について考えることは、経済学の専門的な知識がなくてもできることです。今回はピケティの著書『21世紀の資本』が取り上げられました。同著のような新しい見方が出てきていることからもわかるとおり、我々が今まで考えてきた資本主義のとらえ方は、まだまだ刷新できるのだと思います。だから、考えることを止めては駄目なのです。今回の収録は、「考える道筋」を視聴者の方に示せればいいなという思いで臨みました。

――今回の番組で“興味を持った、あるいは、印象に残った発言や話題”はありましたか。

萱野 崔真淑さんが、「社会問題の課題解決に投資することが新しいビジネスを生む」とおっしゃっていたことは印象に残りました。「ソーシャル・インパクト・ボンド」という考え方ですね。よく、「物もサービスも溢れているから、経済成長なんか目指さなくていいのではないか」という言説が聞かれます。しかし、ニーズというのはいろいろな形で出てくるものです。高齢化や少子化などの問題だって、解決されるべきニーズなわけですよね。それに対して投資し、リターンを得るという仕組みの大切さを、お話を聞いて改めて認識しました。

――日本における資本主義は、今度どうなっていくと思いますか。

萱野 ピケティの議論は経済成長しなければ、格差はさらに広がる」ということが理論的な一つの肝になっています。成長しなければ資産を持っている人だけがどんどん儲かるようになってしまうということです。ですから、やはり日本は引き続き経済成長を目指す必要があると思います。社会が存続する限りニーズは新しく生み出されていきますから、イノベーションは常に起こりますし、フロンティアは生まれ続けていくと思っています。

――最後に視聴者へのメッセージをお願いします。

萱野 冒頭にも言いましたが、考え続けなければ駄目だと思っています。現在は金融市場がますます大きくなってきています。短期的な利益を目的とした投機が拡大している時代に、我々の労働や生活を安定化していく仕組みをどのように工夫して作っていくことができるのか。今回の収録が視聴者の方にとって「考え続ける」きっかけになれば嬉しいです。

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