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2015.04.24
2014.12.24

「ニッポンの大転換2015」番組収録後インタビュー:安田洋祐

2015年1月1日(木)23:00~01:30[1月2日(金)深夜]放送予定のニッポンのジレンマ「ニッポンの大転換2015」収録後、安田洋祐さんにインタビューを行いました。

安田 洋祐 (ヤスダ・ヨウスケ)

1980年生まれ。経済学者。東京大学経済学部卒業後、米プリンストン大学でPh.D.取得(経済学)。政策研究大学院大学助教授を経て、2014年より大阪大学経済学部准教授。専門は戦略的な状況を分析するゲーム理論。主な研究テーマは、現実の市場や制度を設計するマーケットデザイン。学術研究の傍らマスメディアを通した一般向けの情報発信や、政府での委員活動にも積極的に取り組んでいる。編著に『改訂版 経済学で出る数学 高校数学からきちんと攻める』(日本評論社)、『学校選択制のデザイン ゲーム理論アプローチ』(NTT出版)など。

――今回の番組で“最も伝えたかったこと”は何でしょうか。

安田 二つあります。一つは、女性問題の話です。番組でも東大女子の人数についてデータを持ち出して語りました。この問題については僕自身、名案を思い付いているわけではありませんが、変えていかなくてはいけないという問題意識を持っています。スタジオで皆さんが、一定の時間をとってこの問題を議論してくださったのでよかったです。テレビを見ている方も、解決策はないまでも何かしらアクションをしていかなくてはならない、というきっかけになったのではないでしょうか。
 もう一つは、ミクロレベルで少しずつ社会をよくしていくことの重要性です。マクロのビジョンというのは魅力的ですが、安易に大きなスローガンやビジョンを出すのは危険でもあります。なぜならそれによって良い方向に向かっていくこともあるけれど、歯止めが利かなくなることもあるからです。様々な価値観・考え方がある中で、多数決で一つに収斂させていくのではなく、ロジックやデータや肌感覚と照らし合わせながらミクロレベルで解決策を探るのが健全だし、向かっていくべき社会の姿だと思います。人類にはそれができるだけの智恵もあるし、今の時代、それに必要なデータも集めやすくなっています。

――今回の番組で“興味を持った、あるいは、印象に残った発言や話題”はありましたか。

安田 最後に猪子さんが、「日本人から生命力が失われている」と仰っていたのはインパクトがありましたね。ちょっぴり荒唐無稽で、データやエビデンスがあるわけではなく、猪子さんの肌感覚から出た一言だとは思うんですが、なんか共感してしまう。確かに日本人に荒削りさがなくなり、一人一人が小粒になっている気はします。ただ、まずやらなくてはいけないのは、本当に荒削りさがなくなっているのか、サンプルを増やして客観的に調べることでしょうね。その上で、経済の仕組みなどとリンクさせて、「こういう理由で生命力が落ちているように見える」と言えたりすると面白いと思います。

――資本主義をよりよくするためのオルタナティブには、どんなものがあるでしょうか。

安田 まず、広い意味での資本主義を捨てるのは間違いだし、捨てることはできないと思います。人類はこれまで資本主義に対抗するために、色々なオルタナティブを出し、国家独裁主義にも共産主義にもトライしてきました。しかしそうした代替案が失敗したという歴史がある。壮大な社会実験をやってみた結果、共産主義、計画経済はうまくいきませんでした。これを端的に表しているのは朝鮮半島です。
 朝鮮半島に住んでいる人は、生物学的にも人種的にもまったく同じですが、戦争によって南北にわかれました。北は共産主義・計画経済に、南は市場主義経済になった結果、自由さであれ、豊かさであれ、平均寿命であれ、南のほうが圧倒的に北を上回っているわけです。これを見れば、いくら魅力的に聞こえたとしても、共産主義や計画経済にしようという発想にはならないわけです。資本主義をバージョンアップしていくしかありません。
 その施策としては二つあります。一つはマクロ経済で舵取りしていく方向で、財政政策や金融政策などの経済政策を変えていくやり方です。その点では、古典的で地味に聞こえるかもしれませんが、所得の再分配は重要だと思います。この先、所得再分配をしないと間違いなく格差が進みます。なぜかというとIT技術が一部の成功する人と、それ以外の古典的なサービス業に従事する人を分断していくからです。ベーシックインカムや負の所得税も同じ発想ですが、できるだけ所得の再分配を進め、働く意欲をそがない形で制度設計をしていくことがマクロレベルでは必要です。
 二つめにミクロレベルでは、個別の企業の取り組みでうまくいったもの、うまくいっていないものを可視化して、うまくいったものを広めていくという方向があります。何がうまくいって何がうまくいっていないかは、ある程度客観的に評価できるようになっているので、それをミクロレベルで広めることが、長い目で見ると解決策につながると思います。
 これに関連して言うと、格差の解消にも働き方の多様性にもつながるという意味で、僕が注目しているのが在宅就労です。これは女性の社会進出にも役立ちます。IT化が進んでいるので、家でできる仕事もたくさんあるはずですから、できるところから進めればよいのです。在宅就労でキャリアを損なわずにきちんと給料も稼げて、女性でも障害者でも働けるという企業が出てきて業績が上がれば、優秀な人が働きたいと思うはずですし、ビジネスモデルとしても成り立つと思います。在宅就労でも割り引かずに、アウトプットを見て人事評価をするような働き方や企業が、今後は鍵を握っていくのではないでしょうか。

――最後に視聴者へのメッセージをお願いします。

安田 大学の先生っぽくなりますが、勉強してほしいですね。世の中の仕組みや制度に漠然とした不満を抱えている人は多いと思います。でもよくよく調べてみると、悪いと思われている仕組みが残っていることにもそれなりの理由があったりします。勉強してみると、なぜ悪い制度が残っているのかがわかります。
 僕自身も、経済学という骨となり、血となるものを学びました。それにより世の中の見方が変わったんです。ひとたびからくりが見えてくるにつれて、自分のエネルギーを文句に使うのはもったいないと感じ、どういった形で提言し、社会を変えていけばよいのかを考えるようになりました。ですから若い人には、ぜひ生産的な方向にエネルギーや生命力をぶつけてほしいと思っています。

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