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2015.04.24
2014.12.24

「ニッポンの大転換2015」番組収録後インタビュー:五野井郁夫

2015年1月1日(木)23:00~01:30[1月2日(金)深夜]放送予定のニッポンのジレンマ「ニッポンの大転換2015」収録後、五野井郁夫さんにインタビューを行いました。

五野井 郁夫 (ゴノイ・イクオ)

1979年生まれ。政治学者/国際関係論研究者。東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程修了。博士(学術)。日本学術振興会特別研究員、立教大学法学部助教を経て、高千穂大学経営学部准教授、国際基督教大学社会科学研究所研究員。専門は民主主義論。著書に『「デモ」とは何か―変貌する直接民主主義』(NHK出版)、『国際政治哲学』(ナカニシヤ出版)、訳書にウィリアム・コノリー 『プルーラリズム』(岩波書店)、イェンス・バーテルソン『国家論のクリティーク』(岩波書店)など。

――今回の番組で“最も伝えたかったこと”は何でしょうか。

五野井 「今われわれがどこに立っていて、何ができるか」から考えようということです。恋愛したい、家庭を築きたい、子育てがしたい、など「したいこと」は列挙できるけれど、それらがうまくいかないとき、まず自分の現在の立ち位置と自分にできることは何かを自己点検してみることが大事だと思います。
 たとえば、働く男女が子育てをしたいと思っても、そもそも子育ての時間がなかったり、実家の助けを得られないケースがあったとします。そのときにまず、いま自分にできること、つまり自分の権利は何かを並べてみると、育児休暇を取得する権利や、長時間労働を雇用主に見直させる権利があるわけです。
 育児休暇取得に関しては、労働時間を減らすと給与も減るという不安がありますが、育休取得者が不利にならないよう企業と交渉する方法があります。直談判は難しいため、憲法上で確保されている権利に団体交渉やストライキもあります。ストライキは物騒に思われがちですが、デモと同様、憲法が保障する権利です。それらを行使し「子育てをしたいから労働時間の削減と給与保証をしてくれ」「育児休暇取得をしても出世に影響しないようにしてほしい」と、労働者の権利を訴えることもできるのです。つまり、われわれが置かれている現状を俯瞰して出来ることと出来ないことを確認し、もしできるとしたら現状どの選択肢がわれわれにはあるのかを考えることが大切です。

――今回の番組で“興味を持った、あるいは、印象に残った発言や話題”はありましたか。

五野井 三浦瑠麗さんが、「女性問題で折衝するさいに、保守の人も納得するようなアイデアを出していくことが必要だ」と仰っていたのには感銘を受けました。
 先ほどの長時間労働の改善と育児休暇取得の例で考えてみます。ただ「余暇を増やしてほしい」「子育てがしたい」と言うよりは、労働時間を生活に振り向けていくことで、消費が増えるし子育てする時間も増えるので、企業にとっても好循環になると訴えたほうが強い。さらに少子化対策にもなりますから、国や社会にとっても繁栄をもたらすというさらなる好循環が生じて、それがまた企業や一般家庭にも還元されるはずだ、とすら提言可能なわけです。
 あと先崎彰容さんらの「政治家には権威が必要だから、そのためにはわれわれの税金で箔付けすることもOKだ」や「仕事さえしていれば他は目を瞑る」的な発言には驚きました。公費での料亭やSMクラブ通いを、政治家の権威付けの手段として積極的に是認する発想は、私の考えにはないので、新鮮でした。

――今の政治の一番の問題点は何でしょうか。またその解決策も教えてください。

五野井 一番の問題は、われわれが無力だと思わされている点です。選挙で無党派層が投票すれば、今の政治をひっくり返すことも容易です。けれども、投票前にマスコミから「自民だけで300議席を超す勢い」などと言われると、それを真に受けて、自分の一票など無駄だ思い込んでしまう。社会科学では「予言の自己成就」と呼ばれる現象がありますが、今回の衆院選ではそのような側面も見受けられました。それでも自民党は300ではなく、291に留まりました。
 しかしながら、沖縄県や滋賀県の知事選では、三十数パーセントの無党派層の六割が投票することで、政権党による推薦のない候補者を勝利に導いています。実際、95年以降の日本の選挙では固定の組織票よりも、無党派層こそ「第一党」なのです。無党派層が投票所に赴くことで、政治を動かせます。今回の衆院選でも沖縄がそれをすべての選挙区で再び証明しましたね。
 したがってこの問題の解決策は、まずわれわれは無力ではないと気付くために自己点検をおこない、どんな権利を有しているのか確認してみることです。社会権のなかでも生存権や労働基本権など、憲法上の様々な権利を並べてみると、現状を変えるために使える武器があると気が付くことでしょう。「われわれのための社会と会社」なのであって、「社会と会社のためのわれわれ」ではないのです。われわれの人生が、社会や会社によって翻弄されてよいはずがない。

――最後に視聴者へのメッセージをお願いします。

五野井 視聴者の皆さまが有している権利の持つ力の可能性に、気付いてほしいですね。一度それらに気付くと行使してみようと思えるし、行使してみると、今までジレンマだと思っていたことが解決したり、動かないと思っていたものがじつは動かせるのだと実感できるはずです。この社会が抱えているジレンマの解決は、じつは視聴者の皆さま自身の力でできるのです。

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