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2015.04.24
2014.07.17

「僕らのアグリビジネス論」番組収録後インタビュー:浅川芳裕

2014年7月27日(日)0:30~01:30[7月26日(土)深夜]放送予定のニッポンのジレンマ「僕らのアグリビジネス論」収録後、浅川芳裕さんにインタビューを行いました。

浅川 芳裕 (アサカワ・ヨシヒロ)

1974年生まれ。農業ジャーナリスト。農業総合サイト「農業ビジネス」編集長。山口大学農学部講師。カイロ大学文学部在学中に「アラブの春」につらなる学生運動に参画。月刊『農業経営者』(農業技術通信社)副編集長を経て、現職。ジャガイモ専門誌『ポテカル』編集長を兼務。著書『日本は世界第5位の農業大国』は15万部のベストセラー。他に『TPPで日本は世界一の農業大国になる』など多数。言論活動だけでなく、実際の農業参入アドバイザリーを行い、自身も田畑山林をマネジメントするなど現場事情にも精通する。

――今回の番組で“最も伝えたかったこと”は何でしょうか。

浅川  農場の多様性。農場のあり方は、今回の「僕らのアグリビジネス論」に出演した方をみても三者三様です。その根底にあるのが自立です。自立できていなければ、国の政策に沿った補助金依存の画一的な農業をするしかありませんが、自立すれば未来を自らデザインできる職業になります。
 その意味で、これから農業をはじめる方にとって成功のポイントはひとつだけです。自立型の「ファームデザイン(農場設計)」を行い、実行するだけです。
 そんな農場が増えている現在、日本農業は転換点が訪れていると思っています。

――今回の番組で“興味を持った、あるいは、印象に残った発言や話題”はありましたか。

浅川  伏見友季さんから、「昔ながらの農家トークは重い」といった発言がありました。特に稲作農家にはそういった傾向が強い。家系を継ぎ、地域の伝統を守り、国民の食を担っていると自負する一方、消費者のコメ離れや農業への無理解を嘆くばかり。自ら責任を持つべきコメビジネスの運命を過去や他者に関連づけてしか語れない。これでは、魅力的な産業にはなりえません。事実、市場規模がもっとも減少しているのが稲作業界です。
 そのことを彼女のような新規参入者がはっきりと言い続けることは、古い稲作業界の体質変化に重要だと感じました。

――農業の魅力を教えてください。

浅川  「農業は唯一人間の本性にあった職業」(トルストイ)と言われるように、自由な生き方ができる点でしょう。基本はオフロードで、直射日光を浴びながら働きますので、動物としての人間の本性にあっている。農業は植物が育つのを支援する仕事。ですから、人間の関与が100%ではない。しかし、自然に不平不満をいっても仕方がない。そうしたままならない「環境」をベースに、自分の「哲学」、そしてサバイバルのための「経済」を調和していくクリエイティブな仕事なわけです。人間関係を調整するオフィスワークや工場の管理業務とは一線を画したフィールドの全体性が農業にはある。
 ある農家は「大勢の子供を産んで、育っていく感覚。しかも、毎年、確実に巣立っていく充実感は大きい。本当の子育てではそうはいかないが(笑)」と語っていた。自分のアクションに結果がついてくる魅力ということでしょうか。収穫する農作物の継時的変化はもちろんのこと、自ら開墾し耕作する田畑の変化に見とれるほど感動をする農家もいる。
 「農業は大地に鍬で彫る版画なり」(勝部徳太郎)との言葉が残っているぐらいです。

――日本の農業が抱える課題は何ですか。

浅川  政府の指導・介入が多い。また、それについていくことが善だと妄信する農家もまだ多い。そうした統制農業体制が残っていることが、最大の課題です。
 農業の究極的なミッションは、お客様を健康にするということのはずです。健康で美味しいものを安価で提供する一連の活動がアグリビジネスといっていい。その実現のために土の健康、作物の健康、家畜の健康を高める創意工夫の実践が農家の一義的な仕事です。
 つまり、農業のミッション――土の健康とお客様の健康をつなぐバリューチェンにおいて、政府が果たすべき役割など存在しない。
 反対に「政府の介入が減れば食っていけない」という農家は自分の利益ばかりを語る傾向にある。お客様のことはお構いなしだ。
 介入がなくなればそんな固定観念から解放される。もっともっと頭と心を使うようになるでしょう。価格を下げる努力をし、健康な農作物で地元を豊かにしていける。税金もブランディングもいらない。お客様や地元に愛されてこそ、日本の農産物は「世界商品」になり得るんです。

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