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2015.04.24
2013.04.23

「“絶望の国”の幸福論2013」番組収録後インタビュー:小室淑恵

2013年4月28日(日)0:00~1:00〔土曜深夜〕放送予定のニッポンのジレンマ「“絶望の国”の幸福論2013」収録後、出演者のみなさんにインタビューを行いました。

小室 淑恵 (コムロ・ヨシエ)

株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長。06年㈱ワーク・ライフバランスを設立。「ワーク・ライフバランス組織診断」や「育児休業者支援復帰プログラムarmo(アルモ)」、「介護と仕事の両立ナビ」、「朝メール.com」などを開発。09年よりワーク・ライフバランスコンサルタント養成講座などを主催、多種多様な価値観が受け入れられる社会を目指して邁進中。二児の母の顔をもつ。内閣府の委員など複数の公務を兼任。著書多数。近著に『夢を叶える28日間ToDoリスト』(講談社)。

「幸福ですみません」という感覚を持つ若者たち

小室  今回のテーマは「幸福論」ということでしたので、事前に、自分なりに少し調べてみました。私はいま38歳ですが、この番組のターゲットである20代の人の考え方はどんな感じなのかなと思い、番組に出る前に、いろいろな人の声を聞いてみたのです。
 番組の中でも取り上げられていた調査で、「幸福である」と実感している人が、20代にむしろ多いというデータがありましたが、思った以上にポジティブな意味ではない、と感じました。
 世界にはいろいろな国があり、自分たちと比較して大変な国のことも知っている世代なので、それと比べたら、「そりゃあ幸福ですよ」と一応みなさん答えるんだけれども、「幸福ですみません」みたいな、“豊かに過ごしてきてしまったことに対する罪悪感”というものをすごく持っている。
 団塊世代の方の「苦労して得られるものがある」という“根性論”が日本にはあると思うのですが、そういう苦労を免れた自分たちは、苦労しないと身につかないものが身につかないままきてしまった“不完全な自分たち”なのではないか、というような感覚が、若い人たちに共通して感じられるのです。
 幸福だと答えている割合が20代で高いのを、「20代の人たちは困っていないからだ」「まだ困ることがないから幸福だと安易に言えるのだ」という意見もありましたが、私は、「幸福だ」と答えつつも「幸福ですみません」というような自信のなさがつきまとっているのではないかな、と感じました。

過去の人たちの評価基軸に振り回されない

小室  私はいろいろな国の人口動態とか、それによって働き方がどう変わるかということを専門にしておりますので、その国の状況、例えば経済の発展というものと、働き方、幸福かどうかといったことを関連づけて考えます。
 日本は確かに物質的にはとても豊かで、そのことで苦労をさせられてはいません。そんな中、今ちょうど苦労しているアジアの同世代と比べられることが大きな原因だと思うんですね。
 「中国や韓国の若者は、日本の1970年代みたいにハングリー精神があって頑張っているぞ」とよく言われませんか(笑)。それは、70年代当時に若者だった人たちが、過去の自分を誉めるような気持ちで、自分たちを評価して言う言葉なのです。
 でもそれは、自分が過ごしてきたものがすべてだ、と思っている人たちの意見です。そんな過去の人たちの評価基軸に振り回されて、「若者としてハングリー精神が足りない。豊かすぎてダメになった世代だ」なんて変に反省とかしなくてもいいんですよということが、私が番組でも一番伝えたかったことなのです。

――「個人」の幸福か、「社会」の幸福か。どちらを先に考えるべきだと思われますか。

小室  1970年代だと、やっぱり「社会」の幸福が大事だったと思います。というのは、全員が非常に似たフェイズ(段階、局面)にいたので、社会が一括して幸福にしてあげられる構造でした。ほぼみんなが同じラインに乗っかって生活が進んでいくような状態で、「日本という国の幸福はこうなので、ここに一番投資します」、「ここに一番たくさん公共事業を行います」というように、大きな枠でガンとお金を費やすことによって、似た状態の人たちを効率よく幸福にできるという状態が、70年代にはありました。
 でも今はもう、多様で、複雑な状態なので、国が幸せにしてあげるということ自体がほぼ不可能なんです。ですから「社会」の幸福みたいなことは目指しようもないですし、共有されていない“幸福の概念”に対して投資をすることは、非常に非効率です。
 「個人」と「社会」どちらが先か、というよりは、「個人」が自分の幸福の軸を決めて、それに対して小さくてもいいので行動を起こしていくことが、全体の幸福をつくっていくという手法しかありえないのかなと思います。

――小室さんご自身は、何が自分を幸福にしてくれると実感されていますか。

小室  何か1つのものに押し込められず、いくつかの軸があることですね。それが一番幸福だと思っています。
 例えば私の1日でいえば、私の会社は全員残業禁止という方針を貫くことで、創業してからずっと増収増益を続けてきました。仕事は絶対18時に終わらせるという意識があるからこそ、とても集中することができています。非常に密度の濃い仕事をするので、18時ぐらいにはぐったり脳が疲れてきて、9時間離れていた子どもたちとすごく会いたくなって、「会いたい!」という気持ち満々で2人の子どもを迎えにいくわけです。毎日ドラマみたいに(笑)、子どもたちの名前を呼んで、ギュウギュウっとハグします(笑)。
 そして家に帰ってきて、子どもたちとたっぷり時間を過ごすと、家事をして過ごす中でいろいろと困らせられたりもして「可愛いんだけど、もうっ!」となって、翌朝には「あー仕事がしたい!」という気持ちで意欲満々に仕事に戻ります。さらに土曜日には学生たちへのボランティア、日曜日には大事な友人たちとのパーティーで別の刺激を受ける……このように、複数の軸を持ち、自分の思考を切り換えています。
 時間はありすぎたらいいものではなくて、制限があるからこそ、その中で適度なバランスが生まれると思うんです。子育てだけをすれば密室育児に苦しくなり、長時間労働では仕事の評価にしがみついて苦しくなります。妻が育児だけ、夫が仕事だけになると「あなたは育児の辛さわからないでしょう」「おまえは仕事の辛さわからないだろう」と責め合って互いに不満がつのります。
 いつも3つか4つの軸を持ちそれらに時間を適正に割り振って、1つだけにしがみつかない状態にすることで、何倍もの相乗効果を感じている状態。それが一番の幸福だと私は思っています。

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