「ニッポンの大転換2015」番組収録後インタビュー:村上裕一
2015年1月1日(木)23:00~01:30[1月2日(金)深夜]放送予定のニッポンのジレンマ「ニッポンの大転換2015」収録後、村上裕一さんにインタビューを行いました。
村上 裕一 (ムラカミ・ユウイチ)
批評家、株式会社梵天代表。1984年生まれ。ライトノベル・マンガ・アニメ・ゲームといったサブカルチャーから、文学・現代思想・政治まで縦横無尽に論じる。著書に『ゴーストの条件 クラウドを巡礼する想像力』(講談社)、『ネトウヨ化する日本 暴走する共感とネット時代の「新中間大衆」』(KADOKAWA)。
――今回の番組で“最も伝えたかったこと”は何でしょうか。
村上 正直、今が転換期なのかどうかはわかりません。しかし、転換期を生きている人は、そもそも今が転換期なのだということが気づきにくい。転換は静かにゆっくりと起き、後になってわかるものだからです。だから、起きているか起きていないかわからないけれど、静かに変わっていっているものに対して、感受性を持ったほうがいいと思います。高経済成長期の人たちは、変化を実感しながら成長できていたのかもしれませんが、今はそれを実感しにくい。そうした状況が変化に対する不感症を招いているのではないでしょうか。特に今、自分に目標がなく、立ち位置がわからなくていく先もないと思っている人にとっては、転換に対する感受性を持つことが重要になると思います。
――今回の番組で“興味を持った、あるいは、印象に残った発言や話題”はありましたか。
村上 研究者の方々から、「大学で働くのも大変であり、アッパークラスの生活をしているわけではない」というお話がありました。そのとき、僕は「生活が大変なのに、どうして天下国家のことを考える余裕があるのですか?」と尋ねたところ、政治学者の五野井郁夫さんが、幼い頃、政治家に囲まれて育ち疑問を感じたというエピソードを披露してくれました。そういった自分の行動の指針になったような体験を語ってくれたのは、とても良いことだったと思います。選挙のたびに、若者の投票率が低いことが問題になっていますが、若者が投票に行く習慣がないということは、そもそも政治について考える仕方がわからないということだと思っています。政治学者に現在の政治のことを聞くことには意味があるでしょう。しかし、その考えや問いに至ったプロセスを知ることも同じくらい重要です。そこを掘り下げないことには、政治を身近に感じることはできません。
――2014年12月の総選挙でも、若者の投票率が低いことが問題になりました。
村上 極端なことを言いますが、衆議院と参議院を「若者院」と「老人院」にわけて投票したらどうですかね。そうすれば投票率の多寡は問題になりませんし、若者が政治に関心を持つことにもつながります。若者も国民なのだから同等に遇するべきです。これはかなり実現困難な提案ですが、若者の意見を吸い上げるなんらかの仕組みを整えていくことが必要だと思います。また、投票以外での政治参加の仕組みを同時に整備していくこも重要になるでしょう。
――最後に視聴者へのメッセージをお願いします。
村上 「ニッポンのジレンマ」を観るのは、社会に対して問題意識を持っている方だと思います。しかし、「なにが問題なのかわからない」「自分がどこを向いて歩いていけばわからない」という不安を抱えている人がほとんどではないでしょうか。それは裏返せば「解決すべき問題そのものに直面したい」と思っている人たちが多いのではないかということです。なぜそう思うかというと、僕自身もそうだからです。この番組は善かれ悪しかれ、その空虚な問いからスタートしていることは間違いありません。だから、視聴者の方には「一人ではない」ということを伝えたい。誰もが大なり小なり不安を抱えていて、なんとかしたいと思っています。なんとかする抗い方を不器用ながら示していきたいと思っているので、今回の収録を手がかりにして2015年を進んでいく力にしていただければ幸いです。