「格差を超えて 僕らの新たな働き方」番組収録後インタビュー:西條剛央
2013年1月1日(火)23:00~25:30放送のニッポンのジレンマ「格差を越えて 僕らの新たな働き方」収録後、出演者のみなさんにインタビューを行いました。
西條 剛央 (サイジョウ・タケオ)
1974年、宮城県仙台市生まれ。心理学者、哲学者。早稲田大学大学院(MBA)専任講師。自らが体系化した「構造構成主義」の理論を用い、日本最大級のボランティア・プロジェクト「ふんばろう東日本支援プロジェクト」を立ち上げる。著書に『構造構成主義とは何か』(北大路書房)、『人を助けるすんごい仕組み』(ダイヤモンド社)など多数。
――「ニッポンのジレンマ」のようなTVの討論番組は初めてということですが、その印象や、言い足りなかったことなどありましたか?
西條 最初のうちはその場で何が求められているのかということが分からなくて、とまどった部分がありましたが、できるだけ建設的になるように意識して話すようにしました。
討論の前半では、今回のテーマの主題である「格差社会」の制度の問題が話し合われましたが、制度の話をしてしまうと、どうしても「制度」や「べき論」になってしまう。それはとても大事なことなのですが、じゃあ自分たちでその制度を変えられるのか、また視聴者ができることはあるのかということを考えると、そこで話は終わってしまうと感じました。そうであるならば副題のほうの「新しい働き方」のモデルを提示することによって、「格差社会」のほうに切り込んでいったほうがいいのかな、と途中で思い直しました。そういう意味で言えば、白木夏子さんの仕事観は共感できるものがありましたし、安藤美冬さんの提唱された「パラレルワーク」や、宇野常寛さんが会社員時代に会社と交渉して「週3日勤務」にしてもらった話などは、とても興味深かったですね。宇野さんはゲームでいえば「ハードモード」でも「イージーモード」でもなく、その中間の「ノーマルモード」のような働き方が普及すればといったことを言っていましたが、そうした働き方に、何かいい名前をつけることでより正統的な働き方として普及するといいなと思いました。
最後のほうでは、多様な働き方をする人が増えて、それらが正統なものとして認められ、またそれを制度的にバックアップするような仕組みができて「格差」をめぐる“理不尽さ”が低減すれば、その分幸せに生きられる人が増える、といったように「個人の働き方」と「社会制度」の話をリンクさせて話したつもりです。このあたりはもっと深めていく余地があるのかなと思います。
あと、反省点としては、自分が意図したことを言い終わらないうちにかぶせられることで、真意が伝わらないということも何度かあったので、討論番組ではもっと早口で話さなきゃいけないのかなと思いました(笑)。
――2013年の抱負をお聞かせください。
西條 今、取り組んでいる「ふんばろう東日本支援プロジェクト」の活動を継続していき、かつ、先日にも大きな余震がありましたが、どこで何が起きてもおかしくない状況の中で、想定外の災害にも対応できるような防災のための考え方を広めていきたいと思っています。
また、格差をはじめとする様々な社会問題の大本には、民主主義をどう「2.0」にバージョンアップしていくか、という問題があって、その方法として「構成構造主義」のような考え方は有効と考えています。「どういう方法がよいのか」という議論をするときに、どういう状況で何をしたいのかという目的と切り離すことができないんです。なぜなら「特定の状況で目的を達成する手段である」というのがあらゆる方法に共通する本質だからです。ですから「どういう方法が有効か」は(1)状況と(2)目的を踏まえて打ち出していけばよい、ということになる。これまでこうした「構成構造主義」の考え方を使って被災地の「支援格差」を埋める活動をしてきたわけですが、今後はその理路を使って格差や原発問題といった具体的な社会問題を解決する道筋を示していきたいと思っています。